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黄色い花の冠を君へ

第1章 貴方が来るまで…


「ノエラ、今日からここで暮らすのよ」

家を出て行った私とママは遺跡を住処とした。そこに元居た私たちの家にそっくりな一軒家がぽつんと建っていた

「あの人がここに同じホームを建てたの。ノエラが離れても生活に慣れるように。わざわざそんなこと…余計なお節介ね」

「パパ…」

「あなたは、三人は、いつもここで遊んでいたそうね」

「うん、今でも思い出すよ」

「……そんなに悲しそうな顔をしないで。貴方は一人じゃない。都よりは物は少ないけど、ここにも楽しいことはいっぱいあるわ。貴方に勉強を教えてあげます。週末はいっしょにお菓子を作りましょう。それから……退屈になったら私と虫取りに出かけましょう!こう見えて虫を探すのは得意なのよ。ふふふ、」


きっと私を喜ばせようとしているのだろう。けれど、私にはママは無理をしているように見えた

「ありがとう、ママ」









その後、この地下世界には何度もニンゲンが落ちてきた。ママはそのニンゲンたちを保護した。けれど、全員がこの遺跡から出て行った。理由は決まって
「僕/私には帰るべき家があるから」
ママもその子たちにも大事な家族がいることを分っていたから、彼らが帰りたいと言った時には快く承諾して、都への行き方を教えた。
だが、ママも私もその後の彼らは知らない。確かめようがなかった。きっと無事に帰れたことを願っていたが、

ここに落ちて来たニンゲンの人数がその残酷な事実を物語っていたのを私は薄々感づいていた



「はあ…」

この遺跡で生活してかれこれ数年。閉じ込められた空間でママは少しやつれていた

そろそろママの誕生日。その日だけでも笑顔にさせたい

そうだ、ママはカタツムリパイが好きだ。サプライズでママにプレゼントすればきっと喜んでくれるはず
しかし、丁度冷蔵庫のカタツムリは切らしていた。遺跡の中を探してもパイに必要なほどの量は取れなかった

「どうしよう…」

その時、ふとアズリエルが言っていたことを思い出した

『ウォーターフェルにはカタツムリがたくさんいてカタツムリパイ好きのママもよく来るんだ』

私は迷わず足を動かし、ママに見つからないようにこっそりと遺跡を出た


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