第8章 試合の前日
案の定、同じフロアにあるヨガや瞑想をする為の静かなトレーニングルームに凪はいた。
ヨガマットの上でスヤスヤと眠る凪を見つけ、相変わらずのマイペースぶりにフッと笑みが溢れる。
『ーーー凪さーん、起きて下さい。』
「スーースーーー……」
側にしゃがみ込み、声を掛けるも返事はない。
なんかこの状況、屋上を思い出すな……。
ふわふわした柔らかそうな髪は以前より少し伸びて目に掛かっている。
掛かった前髪をよけてあげようと徐に手を伸ばし、指先が髪に触れそうになった瞬間、凪の睫毛がピクッと動いた。
『〜〜ッ!』
慌てて指を引っ込める。
ーーーえ?私今、髪触ろうとした⁇⁇
自分の無意識の行動に驚いていると、
「・・・あ、、だ。」
凪が重そうに瞼を持ち上げた。
『・・・おはようございます。って凪さん、皆さんマシンルームに集まってますよ?』
「んーー。知ってる。」
『知ってるって…。あっ、ちょっとまた寝ないで下さいっ⁉︎』
重そうな瞼がどんどん閉じかけているのを見て肩を軽く揺すった。
「・・・・・寝不足なんだよね。」
『ぇえっ⁈寝不足⁇』
彼の口から"寝不足"という単語が出た事に驚愕する。
凪は仰向けのまま、ぼーーっと天井を見ながらポツポツと話し始めた。