第2章 友達以上恋人未満
ふと、口の端に付いたご飯粒が気になって、それに手を伸ばす。
本当に自然に、無意識だった。
「獅音、付いてるよ」
「お、おぉ、サンキュー……」
取った粒を自らの口に運ぶと、獅音が目を見開いて顔を真っ赤にした。
すると、唐突にイザナ君が体を起き上がらせる。
「なぁ、お前等、何で付き合わねぇの?」
「……ん? 私達?」
見透かすみたいな、探るようなイザナ君の視線に、居心地が悪い感じがするのに、目が離せなくて。
私が口を開く前に、隣から獅音の焦るみたいな声がした。
「こ、こいつはっ……は家族みてぇに、近い存在っつーか……」
これは、よくない。
私にとっては、多分よくない返事だ。
正直、そんな予感がなかったわけじゃなかったけど、直接は聞きたくなかった。
スカートを握る私の耳に、落ち着いた声が届く。
「イザナ、そういうのはこいつ等の問題だろ。やめとけ」
イザナ君の隣に座っていた、後輩の鶴蝶君だった。
「じゃー、フラれちゃったちゃんは、俺がもらったげるー」
二人挟んで座っていた蘭が、気持ちのこもらない声で言った。
「お前もやめろ」
気づかれないように、小さく息を吐く。
「えー、蘭絶対浮気するだろうし、やだー」
出来るだけ話題を逸らして、明るく努める。
獅音が気にしちゃいけないから。
だって、今も気まずそうに、心配そうにこちらを見ているのが分かるから。
私は何も気にしていないんだって、思わせなきゃいけない。
「あ、そういえば、あたし達先生に用事頼まれてたんだった。、行こ」
「え?」
「そーだったぁーっ! ダルー。じゃぁ、みんなまたねー」
友達が二人して両側から私の腕を掴み、連行される。
まだ泣くな。
まだ。まだだ。
「、もういいよ。よく我慢したね」
「うん、偉い偉い」
中庭から離れた場所で、周りに人がいないのを確認すると、二人が私を見て笑う。そして、背中と頭を撫でてくれる。その瞬間、私の目からは涙がボロボロと溢れ出た。
思ったよりダメージが大きかったみたいだ。
「気を使わせてごめんね……ありがとっ、二人共……」
「何言ってんのさ」
「あたし等心の友じゃんか」