第1章 斑目君と全力少女
イザナ君が私を横目でチラっと見る。
「おー、ちゃん、ぐっもーにん」
「おはよー、イザナ君」
最初にイザナ君と会った時は、何を考えているのか分からない、危なっかしい印象があったけど、話してみると悪い人ではない。
深く関わるのは少し怖い気もするけど。
獅音は強いイザナ君に憧れているらしい。イザナ君がいかに凄いかを、長々と語られた事もあった。
その輝いた目を見ると、ちょっとだけ嫉妬してしまう。
「二人共、授業真面目に受けなきゃダメだよー」
「お前もな」
頭を軽くくしゃりとされ、二人が去って行くのを見送る。
「はぁー、可愛い……」
「アレ……可愛いか?」
「……私は全然分かんないわ。あんたホントに斑目君好きだよね……」
獅音の可愛さが、友達には理解出来ないらしい。
「獅音の可愛さは私だけが分かってればいーんです。ちょっとちょっかい掛けただけで、すぐ真っ赤になって、動揺しちゃって。もー、ホント、食べちゃいたいくらい可愛いのっ! たまんないのっ!」
「あー、はいはい。そーっスか……」
「重症だね……こんな変態女に好かれちゃって、斑目君も大変だわ……うわぁー、またそれ見てニヤついてるし……」
誰が変態だ、失礼な。
可愛いものは可愛いんだから仕方ない。
私はスマホの画像フォルダの中にある、獅音のベストショットを見てニマニマしてしまっていて、友達はそれを物凄く生ぬるい目で見ている。
「そんな事を言いながらも、友達でいてくれている君達には感謝しかないよ。ありがとう、友よ」
「苦しゅうない」
なんて友達と戯れながら、午前中の授業も無事終えて、お昼休み。
私はお弁当を持って、友達と教室を出た。
「おっ、あれは灰谷弟だ」
「今日兄はいないんだね」
「えー、残念。兄弟揃ってるの見れた日はいい事ありそうなのにー」
灰谷兄弟はこの学校では知らない人がいないくらいには有名で、他にも佐野兄弟、柴兄弟、明司兄弟と、有名な兄弟がたくさんいる。
そして何故ほとんど接点のない下級生、灰谷弟を私が知っているのか。
それはもちろん、獅音をリスペクトされており、獅音がいい奴だと可愛がっている後輩だからだ。
「あ、さん、チッス」
「竜胆君、こんにちは。今日は一人?」