第1章 斑目君と全力少女
カバンだけは先に獅音と共に中に入っているから、残るは私の生身だけなんだけど。
足は掛けられるから、多少は登れるものの、さすがに獅音みたいに飛び越えるのは無理だ。
「ちゃんと受け止めるから、俺を信じて飛べ」
両手を広げ、下で待つ獅音。
信じてないわけじゃないけど、なかなかの高さから飛び降りるんだから、やっぱり怖いものは怖い。
それでも、ここでずっとこうしてるわけにもいかない。
私は目を閉じて、一気に飛び降りた。
スカートの中に風を感じて、フワリと広がる感覚がしたけど、押さえる事もせず、私は薄目を開けて獅音を探して抱きついた。
少ない衝撃で、獅音が私を抱きとめる。
ただ、バランスを崩したのか、獅音が後ろに倒れて私は獅音に馬乗りになる体勢で目を開けた。
「だ、大丈夫っ!?」
「いゃ、悪い。ちょっと気が散った……。怪我ねぇか?」
「うん。獅音が受け止めてくれたから、大丈夫だよ」
妙に顔が赤い獅音に、私は小さく呟く。
「……見た?」
「ふぇっ!? な、ななな、な、にを?」
ワザと聞いているのに、動揺した獅音は目を泳がせている。
こんなにも可愛いのは、本当に困る。私の前だけにしてもらいたいものだ。
「パンツ、見たでしょ?」
「ぱっ!? み、みみみ、みみ、見てねぇしっ!!」
焦り過ぎてワタワタしている獅音の上に乗ったまま、私は体を密着させて耳元に唇を近づける。
「獅音の、エッチ……」
「っ!!?」
最後に耳にフーッと息を吹きかけて、獅音から素早く離れて耳に手を当てながら、口をパクパクしている獅音を放置して、私はカバンを手に取ってカバンを漁る。
「はい、今日のお弁当」
尻餅をついたままの獅音と目線を合わせるようにしゃがみ、獅音にお弁当を差し出す。
「さ、サンキュ……」
「うん。ほら、いつまでも座ってないで、行くよ」
獅音の腕を掴んで引く。
教室に着く頃には、休み時間のチャイムが鳴って、廊下も騒がしくなる。
獅音とはクラスが別で、廊下で別れた。
先生に何か言われるわけでもなく、廊下側の席の私は友達とダラダラ話していると、隣のクラスから獅音が黒川イザナ君と廊下を歩いて来るのが見えた。
「着いて早々移動?」
「おぅ」