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我が先達の航海士

第2章 First dreamers


「ピギャアアアアアアアアア!!」
「はっはーーーーー!何処に逃げたのかと思えば捕まえたぞ!?進水式に呼んだのに居ないから気になっていたが、こんな所に潜んでいたのか」
独特な奇声を上げる、学生服のインド人とのハーフらしき少年が居た。龍水に背後から脇下に腕を通す形でホールドされている。
「龍水君。その子誰?というかマンドラゴラみたいな叫び声やし」
めっちゃ嫌われてるやん、と思わず素の関西弁を出しつつが尋ねた。
「よくぞ聞いてくれた、!この男の名は七海SAI。100万人分の頭脳の天才だ!!」
「違うからっ、僕はただの学生だからっ!」
ジタバタするSAIだが、龍水の個人ジムで鍛えた筋力の前では無駄な足掻きとなる。は錨を降ろし船を収納したのを確認、二人に向き直った。
「私の見た限り、SAI君の方が歳上の様に見えるが。君は龍水君の兄かい」
龍水に降ろせと指示すると、宙に浮いたSAIの足がやっと居場所を取り戻す。ゼェゼェする息を整えつつ、SAIが答えた。
「うん。僕の、弟だよ。あと100万人分の頭脳とかは龍水が勝手に言ってるだけだから」
「フゥン?俺は知ってるぞ!SAI、貴様は四歳の時から10桁同士の掛け算の暗算すら出来ていたからな」
「そんなのは!意味が!無いッ!!コンピューターで幾らでも出来るだろ!?」
否定するSAIだが、成程確かに頭は良さそうだとは納得した。同時にこの欲しがり龍水から激しく追い回されてるのだろうとも。

「そこまで卑下することもなかろう。この『龍黎丸』の帆についても貴様が数値流体力学で計算し、元の形状を再現したのだぞ」
高らかに宣言する龍水にが軽く仰け反った。
『数値流体力学』は、流体の運動方式をコンピューターで計算、流れを可視化する事で観察・観測・設計するものだ。航空機や鉄道、自動車に船舶などの設計における重要な存在である。目の前のよりも明らかに歳下の子に出来る所業では無いのは分かった。
「この船のモデルのエアリエルは、ロンドンからシドニーへの航海途中で行方不明になった。紅茶船はカティ・サークを除き現存していない。現存しない船体も把握した上でまさか、そんな」
有り得ないと口元を手で覆うに、ヒェッ!とSAIが息を呑む。
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