• テキストサイズ

我が先達の航海士

第2章 First dreamers


船の構造をじっと見つめ、が呟く。
「この船、うちの『未来ヶ崎』とは違うな。もしかしてモデルは別か?」
龍黎丸にはマストの柱が三本立ち並び、船首にはジブと呼ばれる三角帆がある。セイル・トレーニングで使用する帆船は『トップスル・スクーナー』と呼ばれる近代帆船だ。あの航海が帆船に興味を持つ切っ掛けだから同じ型かと思えば、どうやら違うらしい。
「ああ!あの船も美しいが、前に画集で見たクリッパー・シップが興味深くてな」
「君、もしや『世界の帆船博物館』を読んだのか。あれは確かに良い本だ、画集だが帆船の歴史も書いてある。何より絵が綺麗だ」
なるほどとが見渡しつつ思案した。
「ほう?明確に書名まで当てるとは、やはり貴様も読んだのか。帆船はこんなにも美しいのに、資料自体が少ない上に絶版ばかりだからな」
自然と被るのだろうと言いつつ、龍水は縄ばしごを登り帆を張る作業にかかる。

【クリッパー・シップ】
『疾走する』という意味のクリップから出来た、快速帆船である。1860年代のティー・クリッパーや80年代のウール・クリッパー等が有名だ。世界中を帆船が貨物を乗せて羽ばたいた時代である。

が一緒にマストクライムを手伝う。安全面に気を付けつつ、マストに結ばれた帆を張って行く。
「ティー・クリッパー・レースだったか。あれは実に興味深いな」
作業の片手間に龍水が話し掛ける。
「イギリスの催しだね。紅茶商人がその年の新茶を真っ先にロンドンに運んだ帆船に賞金を出したやつ」
「ああ!俺があの時代に生きていれば是非見て参加したいな、中々にアツい催しだ。俺は特に1866年のグレート・ティー・クリッパー・レースが好きだ!!」
龍黎丸は、そのレースと同じ『シップ』と呼ばれる分類の船だ。三本マストがあり、その全てに横帆がある。主力が縦帆であるセイル・トレーニングの『未来ヶ崎』と違い、横帆メインだ。
/ 52ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp