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我が先達の航海士

第2章 First dreamers


約一か月前。
は、唇を奪われゴシゴシと口を手で拭った。初めてと言えば調子に乗りそうだと黙っているが、どうも俺が初か、と悟った龍水はニヤニヤしている。
「で、だ。竣工とは云うが、『進水式』とかの儀式もきちんとするんだな?」
が初キスに突っ込まれる前に話題を切り替える。進水式は船舶を初めて水に触れさせる儀式だ。
「ああ!勿論命名式と進水式もするぞ」
龍水は自慢げに頷く。

進水式ではまず命名式を行った後に船舶を最後まで繋いでいる[[rb:支綱 > しこう]]と呼ぶ綱を銀の斧で切断。くす玉から大量の紙テープや紙吹雪が舞う中、船を進水させる。銀の斧は古くから悪魔を取り払うとされる縁起物だ。進水式の後に、船舶内の必要な装置を取り付ける[[rb:艤装 > ぎそう]]が行われた後、やっと竣工。船舶として完成形態になるのだ。

その後、船の性能を測る試運転で検査官と船主、造船所の関係者が乗り込む。終わり次第、船主に船舶検査証書が手渡され、正式な引渡し完了となる。

「良かったよ。龍水君がその辺の感覚はマトモ」
「はっはーーー!船の名前は『龍号』だッ!」
「龍水君。それは絶対に辞めろ!!」
龍水にマトモさを求めた自分が馬鹿だった、とギュルゥと顔を背けてが叫ぶ。

「な、何故だ!?、貴様との婚約の縁をも結んだ船だぞ。貴様の名も入れるのが筋だろう?」
そういうのはいい、と必死にが待ったをかけるも止まらない龍水。
「俺の名前が『龍』だけなのが気に入らなかったのか?ならば龍水号に」
これは他の名前を提案して無理やりにでも変更させなければ。は察した。

「龍黎丸でいいんじゃないか?君の名前と物事の始まりを示す『黎明』から一字取った形だ。日本の船は最後に『丸』を付ける名付けも多いしな」
ふむ、貴様が云うならそれにすると言う龍水に安堵する。
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