第1章 我が先達の航海士
「こら、そこの君。私のメッセージが来るまで気付かないとは。背後に気を付けようね」
三本の金筋を袖に引いた、一等航海士の制服を着た女性が居た。
「!久しぶりだな!!」
「龍水君、久しぶり。君は夢のような日々を現実にするタイプのようだな」
船を眺めるに、ああ!と龍水も横に並び立つ。
「。貴様を俺の船の一等航海士に任命する!」
「ハイハイ。新米船長、しかも帆船航海の補佐となると私くらいだろうしね。帆船は昔から乗り回してるし」
「なにっ、そうなのか!?」
え、知らずに指名したのか?とジト目の。初めて会った時が十三歳。すっかり大人の女性になったは美しさを増していた。涼し気な切れ長の瞳が、龍水を捉えて離さない。
「き、貴様と航海したかっただけだ!案ずるな。報酬はきちんと出る!」
龍水がフランソワ!と叫ぶと、契約書が執事からへと手渡される。航海から戻ってきたばかりで初見のがふんふんと見ていくも、最後のひと項目で視線が止まった。
「龍水君?最後に私と婚約するって書いてあるが」
「ああ!俺が貴様を嫁に貰う!!」
バッシィィイン!!と指鳴らしを仕掛ける右手をぺしっと掴む。ニッコリ微笑んではいるが、心無しか顔が怖い。
「龍水君。のご令嬢を貰う気か?まだ中学生だし大事な事だ、よく考えろ。ウチは他家には嫌われてる。特に七海財閥には」
「知ったことか!年齢も関係無い!!俺は貴様と一生航海がしたいのでな!?」
掴まれた右手を嬉しそうにブンブンする龍水。この様子だと、七海財閥には話を通して無さそうだ。