第18章 *近くなった距離
月島side
『ふーっ‥お腹いっぱい‥ごちそうさまでしたっ』
向かい合うテーブルの先には満面の笑みを浮かべた花澄さんが幸せそうに目を細める
『月島くんのお母さんのお料理とっても美味しいな〜!幸せだったよ〜今度お礼しなきゃ!』
ふわふわと話しながらも
手際良く食べ終わった食器をまとめると腕捲りをして洗い場へ向かう
僕も立ち上がって食器をまとめていると
ポケットに入れた携帯電話の通知音が何度もなっている
マネージャーの花澄さんが忘れ物を届けてくれたから一緒にご飯を食べると連絡しただけなのに
興味津々で長文のメールが何度もきていた
それを全て無視して洗い物をしてくれようとしている花澄さんの背後に立つ
いつもは皆に囲まれていて2人きりになれる事なんか殆どないから
少し調子に乗って腰に手を回してみた
近くなる距離
いい香りがふわりとして心拍数が上がって行く
『わっ!びっくりした!どうしたの?』
「別に‥うちのキッチンに花澄さんがいるなーと思って」
『ふふっ‥なにそれ‥』
「洗いにくいですか?」
『ちょっとだけね』
冗談だけどと悪戯に笑う
後ろから男に抱きつかれてるのにどこまでも鈍感な花澄さんはそのまま洗い物を続ける
『そういえば‥あれ!今なら教えてくれる?』
「あれ‥?なんですか?」
細い腰に手を回したまま屈むようにして顔を近付けるとにこりとこちらを振り返る
『前言ってたでしょ‥ストレッチの時!もっと距離が近くなったら教えてくれるって!今こんなに近いから‥どうかな?』
「っ‥」
無自覚天然とは恐ろしいもので
この距離で
そんな可愛い顔をして
密着して制御が効かなくなりつつある僕に
あの日の答えを求めている
「そう‥ですね。いいですよ‥後で部屋に帰ったら教えてあげます」
『わーい!ありがとう!』
この後何を教えこまされるかも知らないまま
そんな無邪気な可愛い顔でふわりと微笑んだ
触れ合った身体が体温を上げて行くのが分かる
『あれ?なんか腰にあたってる‥?』
鈍感な花澄さんでも分かるように擦り付けた腰