第17章 東京*
澤村side
ずっとモヤモヤとしていた
あの日
及川とは何もなかったのか
まさかとは思うが
さすがに大丈夫だろうと思って玄関で話を振ったのに
びくりと揺れた肩と瞬時に赤くなる顔で全てを察してしまった
「及川に‥何された‥?」
『えっ?!な‥なにっ‥‥って‥そのっ‥‥及川さんお熱で‥っ』
「お熱で?」
『それで‥っ‥きっと‥‥夢でもみてたんだとおもう‥』
段々と声が小さくなっていく花澄を壁際まで追い詰めると白い肌がさらに赤く染まっていく
「はーっ‥‥及川‥‥も及川だけど‥」
『ごめんなさい‥』
花澄が自ら進んでやった事じゃないのは分かるのに
イライラが募ってどうしようもない
身体を重ねたあの日
少しでも俺の事を意識してくれたと思ったのに
「東京も‥音駒の誰かと会うんじゃないか‥?」
壁際まで追い詰めて
逃げ場を無くした花澄の柔らかな唇を優しく噛んで
舌先でフチをなぞる
その度にぴくんと反応する身体
『黒尾さん‥と‥っ』
「今度は、絶対に、俺以外にこの身体触らすんじゃないぞ?」
『黒尾さんと‥会う‥だけだよっ‥?』
「及川ともそうだっただろ?次約束破ったら‥知らないからな」
『わ‥わかった‥っ』
キスのせいで真っ赤になった顔が可愛い
このまま押し倒したい程の気持ちだったが
さすがにあんなに頑張った体育祭の後に無理させるのは可哀想だから
なんとか
ギリギリ堪えた
「約束‥忘れるんじゃないぞ?」
『うんっ!』
「じゃあ‥気をつけてな」
背中を向けて歩き出す俺に手を振りながらまた最高の笑顔でふにゃりと笑う
『体育祭楽しかったね!』
スッと通った鼻筋と
可愛らしい頬が日焼けでピンクにほんのりと染まっている
大きく手を振りかえして
すぐ前にある自分の家に帰ったら妹たちが玄関で待ち構えていた
「お兄ちゃんの待ち受け花澄ちゃん?!可愛いっ!」
さっき登録したばかりの携帯の待ち受けには
応援団の格好をした花澄の姿
花澄の兄さんが送ってくれたその写真は俺の宝物になった