第14章 *熱
及川side
『影山くんとですか‥なにか‥』
最初はうーんと何の気なしに考え始めた様子だったのに
急に何かを思い出したようにみるみる顔が赤くなっていく
『なんにも‥ないです‥』
明らかに何もなかった様子じゃない花澄ちゃんの
大きな目がきょろきょろと泳ぎ出す
「ふーん‥」
『そっ‥そうだ!果物‥買ってきたやつ食べますかっ?!キッチン使わせてもらっても良ければ切ってきますっ』
入ったばかりの俺の部屋から顔を赤くして出て行こうとするからさっと手首を掴んで繋ぎ止める
「行かないで?フルーツは‥あとでいいから」
じっと目を見つめるとまたぎこちなく視線をそらされる
『わ‥わかりましたっ!また食べたくなったら言ってくださいね‥!』
俺が努力して努力して手に入れたものを
天才と呼ばれた彼はあっという間に手に入れていった
飛雄‥お前は
花澄ちゃんですらもう手に入れたのか?
嫉妬や焦燥感
散々味わってきた感情がまた俺の胸の中に蘇る
『あの‥及川さん‥?なんだか顔色がよくないですよ?ベッドで横になった方がいいんじゃないでしょうか‥寒そうに見えます‥』
そう言われて初めて自分が少し震えている事に気が付いた
悪寒に身体を震わせて
言われた通りに布団に潜り込む
『お熱があがってくるのかもしれません‥』
寝転んだ俺のおでこにそっと小さな手が伸びてくる
顔を赤くしたままの花澄ちゃんの体温が高くて
寒気を感じている俺には心地よかった
「寒いからあっためて‥」
『え‥っ?!わぁっ!!お‥及川さんっ?!』
そのままぐいっと手首を掴んで布団の中に小さな身体を引っ張り込む
腕の中におさめた身体がすっげぇあったかくて気持ちが良い
「このまま‥」
柔らかな髪に顔を寄せると花澄ちゃんの甘い香りがふわりと香る
『えっ‥どうしよ‥っ‥及川さんっ‥?寝ちゃった‥?』
ドキドキと伝わってくる鼓動
照れているのか洋服越しでも全身が熱くなっているのがわかる
俺が寝てるって勘違いしてるみたいだし
心地よい体温に目を瞑ると本当に寝てしまった