第14章 *熱
「約束‥分かってるな?」
着替えを終えて
玄関の前で大地が私に釘をさすように問いかける
『わかってる!』
「ならいい‥身体も‥無理するなよ?」
心配そうに伸ばされた手が
そっと腰に触れる
たったそれだけの事なのに
大地の大きな手が触れるだけで色んなことを思い出して
一気に顔が熱くなる
「‥そんな可愛い顔、及川には見せるなよ?」
『わかった‥!』
私を見つめる大地の目は
まだ熱がこもっていて
熱くなった顔が火照ったままなかなか元に戻らなかった
『じゃあ‥行ってくるね!』
結局駅前まで送ってくれた大地に小さく手を振ると優しく頭を撫でられる
「ん‥気をつけてな」
そう言って大地も手を振ってくれる
それから電車に乗り込んだところで
及川さんからメールが来ていた事に気付いた
『えっ?!及川さんお熱‥?!』
今日はいいよってメールに書いてあるけど
もう電車にも乗ってしまったし
近所のスーパーで果物を買って顔を出すことにした
及川さんに送ってもらった住所につくまで迷子になって随分時間が
かかってしまった
おしゃれなかわいいお家の前
インターホンを押すとはーい!と明るい声が聞こえてきた
「あらー!!来てくれたのね!!」
『突然すみません!及川さん大丈夫でしょうか‥?』
「徹なら大丈夫よー!熱出てるだけだから!それより上がっていくわよね?」
及川さんに似た綺麗なお母さんがスリッパを用意してくれる
『しんどいのに申し訳ないのでっ‥よかったらこれだけ渡してもらってもいいでしょうか?』
りんごやももを手渡すと
リビングの奥から及川さんのお姉さんも出てきてくれた
「やだー!めっちゃ可愛い〜!」
お母さんと同じくらい明るいお姉さんにぎゅっと抱きしめられる
『あっ‥兄がいつもお世話になってます‥っ』
「こっちこそよー!それより今日は私達が会いたいって言ったからわざわざ来てもらってごめんね〜!それなのに徹は熱出すし!」
『いえっ‥私もお会いしたかったので嬉しいです!』
「ほんと‥徹がベタ惚れなのも分かるわね!可愛い〜」
「花澄ちゃんっ‥?」