第13章 *それぞれの初めて
影山side
「大丈夫っスか?」
『わっ‥!ご‥ごめんねっ‥なんだか全然足に力入らないみたい‥』
間近で見つめるとみるみると頬が紅潮していく
可愛すぎて
ダメだ
これ以上一緒にいると帰したくなくなる
ふいっと目を逸らしながらも腰に手を回して
ゆっくりと階段を降りていく
『お邪魔しましたっ!』
誰もいない部屋に向かって玄関で律儀に頭を下げる
そんなところも花澄さんらしくていいななんて思いながら歩いてたら
あっという間に時間が過ぎていって
気付けばもう駅に着いてしまった
『わざわざ送ってもらってごめんねっ?本当にありがとう』
ふわりと微笑みながら俺を見上げる
あぁ
まじで帰したくねぇ‥
『影山くん‥?』
足に力が入らない花澄さんが転ばないようにって
繋いだ手
ずっと繋いでいたくて
ギュッと握った手を離せずにいると少し不安そうな顔をして見上げてくる
「‥‥帰したくないっス‥」
『また部活で会えるよ‥?』
「部活‥では‥俺だけの花澄さんじゃない‥」
恋人同士になった訳でもないのに
一度手に入れてしまえばもうどうしようもなく欲しくなって
困らせる事は分かっているのに花澄さんを困らせる事ばかり言ってしまいそうになる
『うーん‥じゃあ今度は私のおうちに遊びにくる?影山君の好きなポークカレー作ろっか!温玉ものせよっ!』
幼い子供をあやすように
俺の目を優しい瞳が見つめる
「いく‥行きたいっス‥」
『ふふっ‥じゃあ決まりね!』
ニコッと
いつもの可愛い笑顔
堪らなくなって抱きしめる
「‥身体つらくないっスか?」
『へっ?!う‥うんっ!大丈夫だよ!影山君は大丈夫かな‥?』
腕の中でわたわたと照れながらも俺の身体を気にかけてくれる
「あれ‥花澄‥?」
抱き合っている俺たちの元へ近付いてくる長身の男が話しかけてきた
俺よりでかい‥月島‥よりでかいか?
『お兄ちゃんっ!』
「へ‥?おにい‥ちゃん?」