第13章 *それぞれの初めて
『んっ‥』
伸びをしようとして
自分の身体が誰かに抱きしめられている事に気付く
『‥?』
ゆっくりと動こうとするけれども
激しく運動をした後のような気怠さで身体が鉛のように重い
寝起きでまわらない頭
重たい身体
重たい瞼をゆっくりと開くと
見慣れない天井が目に入る
あれ‥?
そういえば私‥
影山君とデートに行こうって約束してて‥
それで影山君のお姉さんに会って‥
その後‥
『〜っ!』
もやもやとしていた頭が一気にクリアになって
身体がカッと熱くなる
抱き締められている逞しい腕
ゆっくりと見上げると影山君も目を閉じて眠っている
〜♪
〜♪
『わっ‥お兄ちゃんから‥?』
ベッドの横に置いていた私の携帯電話が鳴り出して
画面にはお兄ちゃんの文字
腕を伸ばして携帯をとろうとするとギュッと目の前の体に抱き締められる
「離さないっス‥」
『〜っ‥影山くんっ‥』
衣服を身につけていない逞しい腕に抱きしめられて
さらに密着する身体に身動きが取れなくなる
ドキドキとうるさい心臓の音
『影山くんっ‥起きて‥っ』
恥ずかしさとか
なんだか分からないドキドキで胸が苦しくなって
影山君の胸をトントンとたたく
「ん‥?」
右手で頭をガシガシと掻きながら
ゆっくりと目を開く影山君とぱちっと目があった
『あっ‥あのっ‥お兄ちゃんから電話きててっ‥離してもらってもいい‥?』
「‥‥‥離したくないっス‥」
影山君はまだ少し寝ぼけているのか
そう言って私を腕の中に閉じ込めたまま
もう一度目を瞑ってしまった
眠ってしまった影山くんの少し緩んだ腕からもそもそと抜け出して
やっと電話に手を伸ばす
『もしもしっ‥お兄ちゃん?』
「花澄〜!お兄ちゃん帰ってきたのに何でいないんだよ〜!」
お兄ちゃんのゆっくりとした喋り方から
少しお酒に酔っているのがわかる
『もうすぐ帰るからっ‥待っててね!』
「お兄ちゃん心配だから迎えに‥」