第12章 合宿の終わり 新たな恋敵
澤村side
今日はようやく花澄と一緒に帰れる
ここ数日はスガん家に泊まってたし
合宿中は一緒だったからまぁいいけど‥
久しぶりに独り占め出来るような気がしてソワソワと着替え始める
「大地またなー!」
「おつかれっした!」
「おー!またな!みんな合宿よく頑張ったな!インターハイに向けてこれからも宜しく!」
部員達に声を掛けてから待ち合わせ場所へと向かうと話し声が聞こえてくる
「電話でもしてるのか‥?」
ふふっと可愛く笑う声が聞こえて
相手が誰かも分からないのに受話器の向こうの相手に少し嫉妬する
『ふふっ‥また会えますよね!黒尾さんのバレー見るの楽しみにしてます!』
「ふーん‥黒尾‥ねぇ」
にやりと笑う食えない笑顔を思い出す
「‥お待たせ」
『ひゃっ!大地っ!びっくりした‥ごめんなさい黒尾さん!私そろそろ帰りますね!はい‥いつでも電話してください!』
それにしても早速電話してきてたのか‥抜け目ないな
『大地っ!!お疲れ様!!一緒に帰るのひさしぶりだねっ!』
「っ‥お疲れ‥」
色々言いたい事はあったはずなのに
ニコッと笑って俺を見上げる花澄が可愛すぎて全部飛んでしまった
『どうしたの‥?大丈夫?』
少し前屈みになる俺に心配そうに手を差しだしてくれる
「‥今日はお兄さんいるのか?」
小さな手をギュッと握って歩き出す
『うんっ!今日は久しぶりに早く帰れるみたい!お兄ちゃんに会いたかったならお家きていいよ!』
「いや‥大した用じゃないから大丈夫!」
本当はお兄さんがいなかったら2人っきりになりたかった
スガとの事や‥色々聞いておきたい事が色々あったから
それでも
まさかこんなにすぐに‥
この身体を他の男に奪われるなんてこの時の俺は思ってもみなかった
『そう?じゃあ帰ろっか!』
「‥そうだな!」
『手‥繋いで帰るの?』
なんとなく
ギュッと掴んだ手を離したくなくて
繋いだままの右手を離さずにいた
「‥いやか?」
『ううんっ!大地の手はあったかくて好きだよ』
本当‥お前には敵わないよ