第12章 合宿の終わり 新たな恋敵
練習試合前のアップが終わって音駒の皆んなが円陣を組む
黒尾さんが長い腕を真ん中に伸ばすとキリッと目付きが変わる
「ー俺たちは血液だ」
『っ?!』
黒尾さんの掛け声にあわせてみんなの顔付きも変わる
「滞りなく流れろ 酸素を回せ 脳 が正常に働くために。
行くぞ」
「あス!!!」
烏野の皆んなとはまた違う雰囲気に身体がぞくりとする
『わっ‥今のっ‥なんだかとってもかっこいいっ‥!』
思わず声を溢すと少し嫌そうな顔をした研磨が振り返る
「そう‥?俺は‥恥ずかしいからやめて欲しいんだけど‥」
そんな猫背の研磨の背中を皆んなパシッと叩いてコートへ歩き出す
「なんで!いいじゃねーか雰囲気!雰囲気!」
さっきまで顔を真っ赤にして逃げてしまった猛虎さんが人が変わったようにニコッと笑っている
「かっこいいでしょ?花澄ちゃんにいいとこみせないとね!オラ 行くぞ」
ビシッと私を指差して黒尾さんが歩き出す
なんだろう‥この程良い緊張感‥
ピリッとした空気が張り詰めているのに全然嫌じゃない
「音駒高校対烏野高校練習試合を始めます!!」
お互いが大きな声を出して頭を下げる
『ついに‥猫対烏‥ドキドキ‥』
皆んながいい顔をして見あっているからドキドキとして胸に手を当てる
『みんな‥がんばって‥』
ピーっとホイッスルの音が体育館に鳴り響いて
研磨のサーブから試合が始まる
ベンチに座ってスコアを記録するためのノートに目を落とす
まず1点目を先取したのは影山君と日向君のあの変人速攻だった
それからも烏野が点数を重ねていくんだけど‥
徐々に‥じわりじわりと点数を詰められて行く
丁寧なバレー‥っていうのかな?
うちとはまた違う強さだ
みんなのプレーに息を呑む
どんどんと点差を縮められて
気付けば点数をひっくり返されていた
そして日向君の早いアタックを
犬岡君がブロックしてホイッスルがなる
『な‥なんかすごい‥』
思わず呟くと猫又先生がにやりと笑う
スコアをとっていたノートをベンチに置いてみんなに渡すためのタオルを持って立ち上がる