第8章 *新しいチーム 始動
夕があげたボールに素早く菅原さんがまわり込んでトスをあげる体制に入る
このほんの一瞬の隙に菅原さんが誰にあげるか悩んで辺りを見渡している
だってこれで東峰さんにあげて
またブロックされたら‥そう思うと菅原さんが躊躇するのが痛いほどよく分かる
どうしたらいいんだろうっ‥
「菅原さん!」
「!」
「もう一回!決まるまで!」
ネットを挟んだ向こう側にいる影山くんが菅原さんに向かって叫ぶ
グッと菅原さんの顔が歪む
きっと菅原さんだって東峰さんにあげたいはずだ‥
でも‥
トスを呼ばない東峰さんをみて
チラリと反対側にいる町内会の嶋田さんに目線で合図を送っている
「嶋田さー「スガァーーーーーッ!」
菅原さんが嶋田さんにトスをあげようと名前を呼んだ時
同時に東峰さんがすごい大きな声で菅原さんの名前を呼ぶ
「もう一本!!」
東峰さんが
トスを呼んでる
菅原さんを呼んでる‥
それだけで私の視界は涙で滲んでよくみえなくなる
Tシャツの裾を捲りあげて涙をゴシゴシと拭う
こんなところで泣いていられない
私はしっかり見届けたい
フワッ‥
菅原さんの綺麗な高めのトスがあがる
キュッと東峰さんが踏み込んで高く跳び上がる
その前に立ちはだかる高い3枚の壁
体をグイッとそらせて腕をしならせるようにしてすごい勢いのスパイクを叩き込む
すごい音がしたかと思うと
高くて厚い 3枚の壁をも押さえ込んで
ボールは向こうのコートへと落ちる
感動してつい大きな声で叫んでしまう
『東峰さんっ!ナイスです!』
菅原さんも夕も 東峰さんのもとへかけつける
「ナイス!ナイス旭っ!西谷もっ!」
いつもチームのムードメーカーの菅原さんが声を掛けると
照れたように頭を掻きながら東峰さんが応える
「‥お前らも‥ナイストス‥スガ 西谷も‥ナイスレシーブ」
一瞬目を見開いた2人は
次の瞬間には最高の笑顔をしていた
涙で滲んだ視界は
拭いても拭いても溢れて来てちゃんとみえない
「そんなに目擦っちゃうと、明日腫れるよ?」
隣に来た縁下くんが私の顔を覗き込む
『うんっ‥でもっ‥嬉しくって‥』
「ま、気持ちは分からんでもないけどな!」
と冷たいタオルを渡してくれる
『ありがとう〜』
冷たいタオルを目元にあてる