第8章 *新しいチーム 始動
「‥俺に譲るとかじゃないですよね?菅原さんが退いて俺が繰り上げ‥みたいの ゴメンですよ」
菅原さんを睨むように見据える
これは‥どうしようかと近付いていこうとすると大地にパッと腕を掴まれる
「大丈夫‥スガの話聞くまで待ってやって?」
そう‥だよね
大地の横で菅原さんの次の言葉を待つ
「‥俺は‥影山が入って来て‥正セッター争いしてやるって反面 どっかで‥ ‥ほっとしてた気がする」
ぽつりぽつりと菅原さんが胸の奥の本音を話し出す
胸がギュッとして自分のTシャツをギュッと握りしめる
「セッターはチームの攻撃の 軸 だ。一番頑丈でなくちゃいけない でも俺はトスを上げることに‥ビビってた‥」
影山くんも黙って聞いている
「俺のトスでまたスパイカーが何度もブロックに捕まるのが恐くて 圧倒的な実力の影山の陰に隠れて ‥安心‥してたんだ‥」
あまり見たことのない苦しそうな顔をした菅原さんが下を向きながらまた話し続ける
菅原さんの心のうちを聞いて 息が詰まりそうになる
「‥スパイクがブロックに捕まる瞬間考えると 今も恐い けど」
さっきまで下を向いていた菅原さんが何かを決意したように上を向く
「もう一回 俺に トス上げさせてくれ 旭」
上を向いた菅原さんの瞳は真っ直ぐに東峰さんを捉える
「!」
東峰さんが息を呑んだのがわかる
その様子をみていて
気付くとポロポロと涙が溢れていた
ポンと頭の上に手が置かれる
私の顔を大地が覗き込む
「泣くのはまだ早いんじゃないか?」
ニッと笑う大地はこうなる事が分かってたのかな?
流れる涙を拭って見上げる
「うんっ‥そうだよねっ」
そうだ、泣いてる場合じゃない
歩き出した菅原さんがいつもの笑顔で影山くんに振り向いて
「負けないからな」
先程とは違った眼差しで影山くんが菅原さんをみる
「俺もっス」
それぞれが自身のコートへ走って行く
東峰さん 夕 菅原さん
その3人が同じコートに立っているだけで
私はやっぱり嬉しくて涙がこぼれ落ちてしまう
「はい、タオル使ってね?」
潔子さんがタオルを差し出してくれる
『潔子さんっ‥ありがとうございます』
タオルで顔を覆って涙を堪えていると潔子さんが背中をさすってくれる
「花澄ちゃんのその気持ち‥よくわかるよ」