第11章 恋慕3−2 花の裁き ヤンデレEND【家康】R18
安土城を後にして、二人は家康の御殿に帰った。
帰路ではずっと黙り込んでいた名無し。
部屋に入っても神妙な面持ちが続く。
「大丈夫?何かあった?」
心配になって問いかける家康に名無しは小さく頷いた。
「あのね、信長さまにお目通りしたとき」
「ああ…」
「家康に聞いていた通りに怖くって、ビリビリと威圧感があって圧倒されて震えが止まらなかったけど…、でもね、声を聞いて、あの目で見つめられたら不思議と心が落ち着いて、この感じ、覚えがあるって思った…」
「…」
家康は無言で名無しの話に耳を傾けながら、薬品棚に向かって瓶に手を伸ばす。
「何だか懐かしい感じ。少し…思い出せそうなの」
か細い一本の記憶の糸がハラリと落ちてきて、手を伸ばして指先で何とか掴もうとしているような、もどかしい感覚。
それを手繰り寄せれば、記憶の欠片を取り戻せるかもしれない、名無しはそう感じていた。
「これからもう一度安土城に行ってもいい?そしたら」
「名無し」
いつもより低くドスのきいた声で呼ばれて話を遮られ、名無しはハッと息をのむが、
「今日は疲れたんだね、たくさんの人に一気に会ったから」
家康の声はすぐにいつもの落ち着いた調子に戻っていた。
「ううん、大丈夫。あの、私、これから」
「ゆっくり休んだ方がいい。この薬を飲んで今日はこのまま褥に入ろう」
家康は淡々とした口調で遮り、丸薬を差し出した。
「ありがとう。でも、今すぐに行った方が思い出せ…」
名無しはぐいっと腕を引かれ、家康の腕の中に捕らえられる。
「駄目。無理しないで」
「あの……んんっ!!」
言いかけると後頭部を押さえられ、強引に口づけられる。
同時に、薬を口移しされて名無しは思わず飲みこんでしまった。
「あんたは何も考えなくていい」
耳に口づけられ、熱い吐息をかけられると、名無しの肌はゾクゾクと粟立つ。
「ま…待って…今はそんな…むぅっ!」
家康は制止を無視してクチュクチュと名無しの耳を舌で犯しながら、片手で彼女の口を塞いだ。
「いいから、もう黙ってて」
もう片方の手を胸元に滑らせていく。