第11章 恋慕3−2 花の裁き ヤンデレEND【家康】R18
「ああ…」
「それに…家康はやがて多くの人の運命を握る存在になるから。詳しくは言えないけど。私の行動が運命を歪めてしまうかもしれない。それが怖いの」
(俺の未来を…知っている?)
未来からタイムスリップしてきた事を名無しは誰にも伝えていない。
だけど家康はこれまでの一風変わった彼女の言動や今の言葉から、漠然とそれを理解した。
(不測の事態で名無しはここに存在して、俺と深く関わる事で未来が変わってしまうのを恐れている…?)
忍者の男との会話を思い出すと、点が線でつながっていく。
(あの男も同じように先の世から来た?『君を連れて帰る』と言っていたのはそういうことか)
「俺の理解が正確かはわからないけど、名無しと出会えたのは奇跡だってそう思う。名無しが好きで、俺にとってこの世で一番大事」
「うん…」
名無しはその言葉を噛みしめて頷いた。
いつの間にか溢れていた涙が頬を伝っていく。
自分を抱きしめる家康の温かい腕に、そっと手を重ねた。
「私も同じ。今はもう、自分の心のままにいたい。家康と離れたくないの、身勝手だけど。そのために、運命に裁かれたい」
「裁かれる…?」
どういう意味なのか?
家康が考えを巡らせたとき、名無しは懐から取り出した容器を開け、中の薬を一気に口に入れて飲み込んだ。
「…!!」
その薬は牢の中に置いてある、家康が調合した薬を収めた棚にあったもの。
名無しは信長の幻影を見た後、半分、無意識の状態でそれを手にして懐にしまっていた。
「この花の裁きを、受けたい」
「名無し…っ!!これを飲むなんて…」
目の前に咲く白い花を原料としたこの薬の作用は、不安や恐怖、その原因となる記憶の消去。
家康はそれをずっと研究していて、以前に薬学指南で彼女に教えたことがあった。