第11章 恋慕3−2 花の裁き ヤンデレEND【家康】R18
「このまま死んだ事にすれば都合がいい。一生閉じ込めておける」
「…」
名無しの思考は追いつかず、しばらく家康の言葉の意味を理解できなかった。
「ごめん、俺が悪かった。お館様との事で名無しを随分悩ませ苦しませた。わかるよ、それで姿を消そうとしたんでしょ」
「…」
「でも、もう大丈夫。一緒にいられる状況を作ったから。名無しは何も心配せず、一生、俺以外の目に触れることなく生きていけばいい」
そう言って笑う家康。
その姿、その瞳は狂気を孕んでいるように思えて、名無しは背筋に冷たいものが走り、首を横に振った。
(まさか…こんな事になってしまったなんて。病気だなんて嘘をつくなんて、冷静で理知的な家康とは思えない…。あんなに真剣に医術を学んでいたのに。私のせいで…)
打ちのめされた名無しは、
「だめ…あなたはそんな事をしてはいけない…」
鉄格子の向こうで後ずさり、俯いた。
日常に戦の無い現代。
当たり前に思っていたけれど、戦乱の世に飛ばされた今は、どれだけ大切なものか身に染みる。
天下統一を成し遂げた家康は、そんな現代に繋がる大きな功績を果たした重要な人物。
自分のせいで家康に処罰が下ったり、信長との関係が崩れるのを名無しは恐れていたが、
さらに今は、自分への執着で家康の理性が崩れ、逸脱した行動がエスカレートしているのを感じ、余計な騒動や戦へと発展して、未来まで変わりかねないという危惧に移り変わっていた。
「なぜ拒む?名無しは俺を好きなんでしょ。一緒にいられるようにしたのに」
どうしたら家康の執着をやめさせられるのか?
「好きじゃない!だからもう、こんなことは…」
「わかるよ、そんなの嘘だって」
名無しは、顔を上げて家康をキッと見つめた。
強い目。
けれども潤んで今にも泣き出しそうな。
(この目、前にも見たな)
その不思議な迫力に家康は気圧されるが、
(…籠絡させたくなる)
ゾクゾクして雄の本能的な興奮にも繋がっていく。
鉄格子の扉に歩み寄り、鍵を開けて牢の中に入った。
再び鍵を閉めてから、名無しに近づく。