第11章 恋慕3−2 花の裁き ヤンデレEND【家康】R18
「名無しは感染病にかかっています」
武将たちを集めた家康は淡々とそう告げた。
「以前、いくつかの村を滅ぼした病と同じ症状が見られ、すぐに隔離しました」
「何だと‥‥名無しは助かるのか?」
眉間に皺を寄せ、心配そうな面持ちの秀吉が尋ねると、
「‥‥わかりません‥‥‥」
家康はそう答えてうつむく。
信長はぴくりとわずかに眉を震わせた。
その病の恐ろしさは皆の記憶に鮮明に残っていて、場の空気が張りつめる。
「その感染病についての研究はまだ途中です。以前に試作した薬があるものの、既に重症の名無しに効くのか、どんな副作用が出るのかわからない。様子を見ながら慎重に治療します」
「他の者に感染してるかもしれないのか?」
「はい。少しでも体に違和感があればすぐに知らせてください。先程言った薬は、症状が軽いうちに飲めば効く可能性が高い。ただ、原料の生薬がかなり希少で、数に限りがある。名無しには誰も近づかないようにしてください」
白い薬包紙に包まれた薬を手にしながら、
(俺は一体、何を言ってるんだ。こんな陳腐な嘘…)
家康は自分のしている事のくだらなさに腹の中で嘲笑した。
感染症やその薬については本当だが、名無しが感染してるなんて真っ赤な嘘。
堂々と監禁するための嘘。
それを臆面もなく吐いている。
「家康様、どうか名無し様をお助けください」
「お前自身の感染にも気をつけてな。何かできることがあれば言ってくれ」
ここ最近、明らかに元気が無かった名無しの様子から、感染を完全に信じている様子の三成と秀吉。
その純粋さに複雑な思いを抱きつつも、
「出来る限りの事はします」
家屋はきっぱりと言った。
「まあ、お前はかからないだろうな、そのような病」
そう言って薄い唇に意味ありげな笑みを浮かべた光秀。
「なぜそう思うのです?」
「何となく、な」
噓だと気付かれているのか?
バレるのを一瞬恐れたものの、すぐにどうでもよくなった。
(バレたらどうなるかな…)
それも面白いかもしれない、と他人事みたいに妙に冷静だった。
信長はずっと押し黙っていた。