第8章 恋慕1 恋の暴走【家康】R18
両腕を押さえられ無理やりに口づけられる。
「んんっ!!」
家康の舌で口内を犯され、激しすぎて息もできない。
苦しくなった名無しは必死にバタバタともがき、何とか顔を背けた。
「……いやっ!!やめて!」
悲鳴をあげて名無しは拒否する。
(嫌…なのか…俺のこと…)
その拒絶は頭を殴られたような衝撃だった。
だけどとっくに溢れた衝動を抑える事はできない。
(今まで俺は…苦しみながら抑えてたのに…それなのに…)
家康は目を閉じる。
膨れ上がった衝動がじわじわと黒いものへと染まっていく気がした。
再び目を開けると、四つん這いに逃げようとする名無しを引き戻し帯をほどきにかかる。
「いやぁっっ!!」
名無しが必死に抵抗しても敵うはずがない。
荒々しく帯をほどき小袖を脱がせると、
襦袢姿の名無しの腕を掴んで柱の方へ引き寄せた。
柱の前に座らせ両手を背中側の柱の後ろへ回し、手際よくそれを帯紐で縛った。
「お願いっ…!やめて!」
柱に縛り付けられ逃げられない、髪が解けて乱れた哀れな名無しの姿は家康を更に欲情させた。
(なに、この興奮)
今まで感じた事のない雄の本能的な興奮。
脳が痺れそうだった。
家康はしゃがみこみ、名無しと視線を合わせる。
名無しは怯えた目で家康を見つめ、その身体は小刻みに震えていた。
「そんな目したってもっと俺を煽るだけ」
頬にかかった名無しの髪を、長い指で耳の方へと流す。
そのまま指先で頬を撫でた。
名無しはびくんと震える。
「ずっと‥‥触れたかった‥‥」
荒々しかった先ほどまでと違い、低く静かな声には切なさが滲んで、頬を撫でる指は羽のように優しくなっていた。
ぞわっと名無しの肌が粟立つ。
「ねえ、どうしてくれんの‥‥いつもいつも、あんたの事が頭から離れないんだ‥‥」
(それ…どういうこと…)
名無しは驚き、目を見開いた。
胸の奥でドキドキと鼓動が高鳴る。
家康の翡翠色の瞳は淡く切ない光を宿し、その美しさに名無しは息をのんで見入る。