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イケメン戦国 書き散らかした妄想

第34章 天女のノート 【光秀】


頼まれていた用事などを済ませるために、いくつかの場所をめぐる。

そして納品先に向かって歩いていると、

「あっ!!」

草履の鼻緒が切れて私は前につんのめった。

あ、これって、縁起が悪い?

不吉なことが起こるジンクスって言われてるよね。

とりあえず私は持っていた手ぬぐいを裂いて応急処置をした。

「ほう、なかなか上手いもんだな」

低く艶のある声に顔を上げると、

一人の男性が屈みこんでこちらを見ていた。

その人は…

「あ!…明智光秀……さん!」

「ちゃんと覚えていてくれたか、名無し」

「…!!」

どうしよう、いきなり出くわしちゃった。

ジンクス的中、怖っ…

たった一度会っただけなのに、私の名前までちゃんと覚えられてるし。

光秀さんは自然な動作で手を差しのべた。

起こしてくれようとしてる?

「だ、大丈夫です」

私はその手を取らずにそそくさと立ち上がった。

「こんなところで会うとは偶然だな」

あの時と同じ、品定めするような視線を投げかけられて落ち着かない。

「この辺りに住んでいるのか?」

「……は…はい。……あるお屋敷に奉公していて…」

もちろん本当のことなんて言えないから、苦しまぎれの嘘をついた。

早く話を切り上げて立ち去らないと。

「にしては、上質な着物だな。ただの町娘には見えんが…」

訝しむような目つきで見られ、じわっと背中に嫌な汗がにじんだ。

私は今、佐助くんの口利きで上杉家ゆかりの姫ということになっている。

敵方の姫だって知られたら、かなりマズいよね。

きっと捕まって…拷問される…

「…ご…ご…ご主人様が…とても裕福で…お優しい方なんです…」

苦しい言い訳だったけど…

「なるほどな」

光秀さんは流してくれた。良かった!

「で、これからどこに行く?」

「はい、仕立て上がった着物の納品に」

さっきの嘘が通ったのにホッとして、つい正直に答えてしまった。

「では俺も一緒に行ってやろう」

「えっ?な、何でですか?」

「近頃は何かと物騒なことが多いからな」

あなたが一番物騒です…!

そう思いながら首を横に振る。
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