第34章 天女のノート 【光秀】
「彼のオフモードを見てみたくなって、ついて行った。まあ、実際は何かを探りに来てるんだろうから、その目的をつきとめるのも兼ねて」
「そっちが大事だろーが!」
幸村のツッコミ、冴えてる。
「しかし不覚にも気づかれしまい、いつの間にか背後から回りこまれた。それがあまりに鮮やかで俺は…」
「そこでやられたのか!?」
「……感動した…さすがだ…その鮮やかさに完全にやられた…」
「はあ?妙なとこで感動すんなよ」
「何とか逃げ切ったんだけど、その時にやってしまったんだ……腰を……ぐきっと……。いわゆるぎっくり腰だ」
「腰?……じゃあお前、何でさっき咳してた?」
「いや、それは何となく。雰囲気的に」
「何だよ…!斬られたとかじゃねーのか。心配して損した!」
言葉とは裏腹に安堵がにじんだ声で言った幸村は、佐助くんの肩を軽くはたく。
そんな様子に私もホッとして声をかける。
「ねえ、ノートはどこで失くしたの?私、探しに行ってくる」
「ありがとう。だけど光秀さんから逃げる時に落としたから、おそらく彼が拾ってる。そうなると取り戻すのはもう無理だ。名無しさんには申し訳ないけど、諦めるより仕方がない」
「そっか…」
「佐助、とりあえず城に帰るぞ。腰に熱い灸をすえてやる」
幸村は佐助くんの肩を支えて立ち上がらせようとする。
私も反対側から手を貸した。
「お灸!ダメ!痛そう!熱そう…!!」
無慈悲にも幸村はその声を無視して、佐助くんを城内へと連れて行った。