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イケメン戦国 書き散らかした妄想

第7章 五色の夜 完結【家康】



書簡を入れた駕籠を奪われる。

「行くよ」

「どこに行くんですか?」

「配達」

「ま、まさか、手伝ってくれるんですか?」

「あんた一人じゃ日が暮れる」

手伝ってくれるの?

‥‥‥‥でもなぜ?

謎だけど、お言葉に甘えてみようかな。

「あ、ありがとうございます」



結局、ほとんど配ってくれ、最後の配達先、家康さんの御殿に辿り着いた。

「家康さん、助かりました。ありがとうございます」

頭を下げると、ふいっと目をそらされた。

「家康、でいい」

「え?」

「さん、はいらないから。それから変な敬語もやめて」

??

予想外の言葉に面食らってしまった。

「いい?」

「はいっ!」

微妙な沈黙が流れる。

そこへ、真ん丸お目目の可愛い小鹿がとことこと現れた。

「可愛い!」

小鹿は私を素通りし、家康さんの隣に。
すらりとした4本の足を曲げて当然のように座った。

家康さんも慣れた様子で頭を撫でる。

「家康さんが飼ってるんですか?」

「‥‥」

あっ、つい敬語使っちゃった。

「じゃ、なくて、家康‥‥が飼ってるの?」

違和感がありすぎる。

「非常食」

ぼそっと漏れた言葉に驚いた。

「ひ、非常食!こんな可愛いのに!」

驚いた私を見て家康はふっと笑った‥‥ような気がした。

あ、冗談、だったのかな?

「あんたも撫でてみなよ」

「いいんですか?‥‥じゃなくていいの?」

恐る恐る手を伸ばすと、小鹿は大人しく撫でさせてくれた。

つるっとした毛並みが気持ちいい。

「本当に可愛い。名前つけてるの?」

「ワサビ」

「ワサビ?珍しい名前。でも一度聞いたら忘れないね」

動物と触れあったの久しぶり。

何だか凄く癒される。

「餌、あげてみる?」

「あげたい!」

むしゃむしゃと食べる様子を見ながら、ほのぼのとした雰囲気に包まれる。

肩の力が抜けて、次第に家康と普通に言葉を交わせるようになってきた。

ところが和やかな雰囲気とは裏腹に具合が悪くなってきた。

‥‥‥立ちくらみがする。

だけど、せっかく打ち解けた家康に迷惑をかけたくない。

「‥‥ちょっと用事を思い出して‥‥今日はありがとうございました…」

とりあえず家康から離れなきゃ。

必死に小走りでその場を離れる。

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