第6章 五色の夜 安土城編5 【三成】R18
「…名無し様…」
ようやく聞こえた彼の声は掠れていた。
「以前から名無し様とお会いすると心が弾み、一緒にいると本当に楽しいと感じていたのですが、前に来てくださった夜以来…貴女がますます私の頭から離れません…」
あの時、三成君は未経験だった。
夜を共にしたいと思ったのは私が初めてだったそう。
性行為については書を読み学んだだけです、
こんな私ですが名無し様に触れてもいいでしょうか?
そう問う彼の、潤んで揺れる真剣な薄紫色のまなざしは強く私の心に響いた。
断われず頷いた私に、三成君は震える手で触れた。
「名無し様は経験の無い私を優しく受けとめ、そして導いてくれましたね」
「…」
導いただなんて、そんな事は無い。あの時、私もひどく緊張した。
「あの経験は私のこれまでの人生の中で衝撃的なものでした。名無し様に触れて、触れられて、熱が昂りそれが抑えきれなくなり…」
話しながら三成君の体温が熱くなってくる。
抱きしめられた時から甘い匂いがほのかに漂っていたけど、それが強くなっていた。
香?
ではなさそう。
これは三成君の体の香り?
「雷に打たれたような頭が真っ白になるほどの快感…。名無し様のおかげで、一生忘れ得ぬ経験になりました」
「そんな…」
こういう事について、これほど真剣に思いを述べるなんて、三成君らしいというか本当に純粋な人。
「私は性的な事にそれほど興味を持てず、淡白な人間だと思っていましたが、あれほどの極致感に達するなんて…あの夜を何度も、何度も、思い出してしまうのです」
ぎゅっと私の体に回った腕に力がこもる。
「名無し様のせい…名無し様が魅力的だから」
三成君は両手で私の頬を包み顔を上げさせた。
甘い匂いはもっと強くなる。
包まれていると熱に浮かされたようにクラクラしてきた。
「…名無し様…どうか今夜も…すべて触れさせてください…」
絞り出すように言った彼の声はもう掠れていない。
私を見つめる薄紫色の瞳は潤んで輝いていて、前の夜と同じように私の心の奥に響いて、そして断れなかった。
さっき見上げた星みたいな瞳。
「はい…」