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イケメン戦国 書き散らかした妄想

第28章 五色の夜 春日山城編3 【謙信】


「謙信さま!」

金髪に陶器のような肌、全体的に色素が薄く、儚げな美貌。

薄暗い墓地の中で白く発光しているようで、この世のものに見えなかったんだ。

「すみません!幽霊が出たかと」

失礼な発言だったと、口に出してから激しく後悔したものの、謙信さまは意に介す様子はない。

「道にでも迷ったか?」

「はい」

見つけてもらって本当に良かった。

胸の中に安堵が広がる。

体を起こして立ち上がったら自然と涙がこぼれた。

「す、すみません。ホッとしたらつい…。死ぬかと思ったので…」

あたふたと涙を拭う私を、謙信さまは表情を変えることなくじーっと見つめる。

そして、その視線は頭の先からつま先まで移動する。

え、何だろう。どうしよう。

軍議中と同じように、ヘビににらまれたカエルの気持ちになる。

「回れ」

「…?は、はい」

私は言われた通りにした。

「あ、あの…どうかしましたか?」

「異常がないか目視で確認している。着物が汚れているが怪我はないか?」

まさか、怪我の確認をしてくれてたとは。

「はい、大丈夫です。あの、もしかして探してくださったんですか?」

「夕餉前に野盗狩りでもしようかと城を出たら、お前が帰ってないから探せと信玄たちに言われた」

野盗狩りが食前の軽い運動なのか。さすが軍神さま、半端ないな。

そして信玄さまたちは、私がいないのに気づいて心配してくれてたんだ。

「ありがとうございました。道がわからず帰れなくて絶望してたんです」

「なぜ迷った?」

ボケっとしていて道を間違え、戻ろうとしたら浪人にぶつかり絡まれ、逃げてやみくもに走ってたことを説明した。

「そうか、では先ほど俺が出くわしたのは、その3人だろう」

「そうなんですか?」

「商人たちに絡んでいたから叩きのめした。ということは、これはお前のか?奪ったものを出させた中にあったが、これだけ持ち主がわからなかった」

謙信さまが差し出したのは、私のお金の入った巾着。

「そうです!良かったぁ。謙信さま、本当にありがとうございました!」

お金まで返してもらえるなんて…!

普段は近寄りがたいお方なのに、嬉しさから思わず満面の笑みが浮かんでしまい、大声でお礼を言うと、

「帰るぞ」

謙信さまは無表情で踵を返した。
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