第28章 五色の夜 春日山城編3 【謙信】
そういえば…
懐から革袋を取り出し、その中身を地面にぶちまけた。
それは佐助くんにもらったまきびし。
「うわっ!!何だコレ!」
ああ、良かった、ちゃんと足止めになってる。
それじゃ、こっちも。
焦る手でもう一つの袋を取り出し、渾身の力で中身の煙玉を地面に投げつけた。
だけど、
こめた力は空回りして、煙玉はポテッと落ちてコロコロ転がっていった。
失敗した…
ところが、まだ飛び回っていた蜂を避けようとした一人の男がそれを踏んづけて、
ドゴオォォォオォン!!!
玉は破裂。
耳をつんざくような爆発音が響いた。
これ煙玉じゃなくて爆弾だった?
こんな危険なものを懐に入れて持ち歩いてたの?
そう思ってたら、
ブシューーッッ!!!
玉の亀裂から白い煙が噴き出し、あたり一面が白い幕に覆われる。
「うわっ!何だコレ!何も見えねーぞ!」
私はもつれる足で、必死に逃げ出した。
佐助くんありがとう…命を救われたよ。
ずっと熱心にまきびしを研究してて、今まで何度も持ってきてくれていた。
『名無しさん、これ使ってくれ。改良を加えたまきびしver.2だ』
『さらに性能が良くなったスペシャルまきびしだ』
『ついに完成した!アルティメットまきびし』
マニアック…って、正直、引いてた私をぶん殴りたい。
素晴らしい研究。さすがアルティメット。
もつれる足で、無我夢中で走り続けていたけど限界がきて、とうとう力が入らなくなり私は転んだ。
膝が痛いし、尻もちをついたときに打ったお尻もズキズキする。
すでに日は暮れ始めていて、周りを見渡すと広がっていたのは、なんとお墓だった。
ひんやりした空気が漂う中、古びて苔むした墓石が立ち並び、その雰囲気は不気味すぎる…
出そう…幽霊…
あの3人に見つかるのも怖いし。
どうしよう、ここがどこだかわからない。帰れない。
スマホで誰かに連絡取ったり、位置情報を調べることもできない。
地面に倒れこんだまま、絶望感に再びサーッと血の気が引いていくのを感じたそのとき、
「おい」
横の茂みから突然、白っぽく発光した人影が現れた。
「きゃああああーっっっ!!」
ついに出た!幽霊?
「落ち着け、名無し」
…って、その声は