第27章 五色の夜 春日山城編2 【幸村】R18
「お前の言う通りだ。俺は、でりかしい、つーのがない」
幸村は自分を責めている様子。
「……」
「ダメなんだ。信玄さまみたいに自然に褒めたりできねー…」
「あの方は特別だから。でもね、幸村とやりあうの、実はなごむんだよ」
「ホントか?」
「うん。ちょっと口悪いけど、親切だって最初から思ってるし」
ここへ来て間もない時期、ある日の夕餉を思い出していた。
その日、佐助くんは不在。
緊張しながら一人で広間に入ると、武将たちの醸すオーラに圧倒され、場違い感がすごくて足がすくんだ。
『おい、イノシシ女、こっち空いてんぞ』
軽口叩いて、自分の隣へと呼んでくれた幸村にホッとして、すごく救われたのをずっと覚えてる。
「色々助けてもらってる。幸村はそのままがいいよ」
「……おー。ありがとな」
白い歯を見せた太陽みたいな笑顔が浮かび、それを見たら私の心も温かくなった。
「謝るために待っててくれたの?」
「それもあるけど、それだけじゃない」
私の肩を掴む手に力がこもる。
「名無し、俺と朝まで一緒に過ごしてほしい」
笑顔から一変、真剣な声と表情で言われた。
「お前のこと、もっと知りたいんだ」
……ずるいよ。
朝は小学生男子みたいだったくせに、繊細な一面があるし、
灯りに照らされたその真剣な顔は、凛々しくて、あまりにかっこいいし…
そんな、今まで知らなかった彼の姿に目を奪われながら、私は無言で頷いた。
それを見た幸村の瞳に純粋な喜びの色が浮かぶと、肩をぐいっと引き寄せられ、そのまま腕の中に閉じこめられる。
「ありがとな」
「うん…」
これってすごく不思議な状況…
幸村の逞しい腕に少し息がしづらいくらい強く抱きしめられて、胸の鼓動を聞いてる。
混乱しつつも、俯瞰しているように冷静でもあった。
幸村をもっと知りたい、私もそう感じていた。
やがて身体を離すと、
「名無し、目、閉じろ」
ぎこちなく言った幸村。
何だかムードないな、
心の中で苦笑いしながら目を閉じると、やがて触れるだけの口づけを落とされた。