第25章 貴女を意のままに4 【三成】R18
真っ直ぐに目を見て傾聴する術師たちに、三成はさらに胸中を吐き出す。
「私はずっと名無し様が好きでした。だけど他の人に取られそうになり、強い嫉妬と焦りを覚え、名無し様に私を好きだと暗示で思い込ませた…。そして…衝動を抑えきれず彼女に触れてしまった…。お二人が私を信頼して預けたものを…自分の欲望の為に…使ってしまった…」
思いを一気に吐露してから、ふうっと息を吐き出すと、昂ぶった心が少しだけ落ち着いた。
「石田様は本当に誠実な方ですね」
穏やかな笑みを浮かべたまま女性術師は言った。
「え…」
「色々と煩われ、苦悩されましたね。でも何も問題はありませんよ」
「なぜです…?」
三成の紫色の瞳が戸惑いに揺れる。
「この意識状態で『適切な暗示』をかければ率直に受け入れる、と前回言いましたね。つまり、適切では無い暗示…本人の意志とかけ離れた暗示は受け入れられません」
「この鈴で、術師では無い方がかけられる暗示は、本来の願望を手助けするものだけ。思考自体を捻じ曲げるのは、大変難しいのですよ」
術師たちは交互に説明し、三成は腕の中の名無しの顔を見つめながらそれを聞く。
「例えるなら、川の流れを堰き止めてしまっている岩を取り除き、滞りなく水を流してあげる事はできますが、川の道筋自体を勝手に変える事はできないのです。上流から下流への自然の流れは変えられない」
「という事は…」
「名無し様が石田様の暗示を受け入れたのは、心の中の願望に沿っていた、という事」
「私たちは、最初にそれを見極めた上で鈴をお渡ししました。石田様は名無し様を大切に思い、既にたくさんの尽力をされていた。名無し様は誰よりも石田様を信頼し、感謝し、思いに応えて元気になりたいと願っていた。お二人の気持ちは通い合い、望む未来は同じだったのです」
「……」
「石田様を好きだと暗示で思い込ませた、と仰いましたが、その後、名無し様の態度は変わりましたか?何も変わらなかったのではないですか?」
「あ…ああ。その通りです」
あの時、確かに何も変わらず、それが不思議だった。
「それは、もう既に名無し様が石田様を好きだったからですよ」
三成の目がみるみる見開かれていく。