第25章 貴女を意のままに4 【三成】R18
「どうやら、経過をお聞きするまでも無さそうですね」
「とてもお元気になられて」
約束の日に再び訪れた術師たちは、名無しの回復ぶりに目を細めた。
「はい。ありがとうございます」
笑顔を輝かせる名無し。
「お二人のおかげです。なんとお礼を言ったらよいか」
三成も頭を下げるが、
「石田様の尽力の賜物ですよ」
術師のかけたその言葉に、
「いえ…」
ふっと顔を曇らせて俯いた。
前回と同様に、術師たちと名無しを残して三成は部屋を出て、一旦別室で待機する。
深刻な宣告を待つようで、心は鉛の如く重かった。
一ヶ月前と心境はまったく異なるけれど、やはり待つ時間は長く、永遠に続くように感じられた。
「石田様、こちらへお越しいただますでしょうか」
「はい」
呼びに来た女性術師は三成を見て、また、ふふっと柔らかく笑ったが、それを意に介する余裕は三成に無く、視線を床に落としたままで、彼女の後について部屋に入る。
襖を開けると前と全く同じ状況で、名無しは目を閉じてぐったりと脱力し、その身体を後ろから男性術師の腕に支えられている。
三成はわかっていてもやはり動揺してしまう。
焦りながら駆け寄って名無しを受け取り、壊れ物に触れるようにそっと腕に抱いた。
「石田様、とても上手く名無し様を導かれましたね。今は愛に溢れて大変健やかなお心です」
「いいえ!違います。…上手くだなんて…そのような事は…!」
名無しの心の状態が良いというのは喜ばしい言葉なのに、三成は激しく首を横に振った。
珍しく感情を昂らせている。
この状態の名無しを見ていると、こんなに無防備な彼女を意のままにしようとした自責の念が、大きく膨らんでいく。
「私は…!」
俯いていた顔を上げると、術師たちの穏やかな眼差しに受け止められた。
ただならぬ三成の様子にも全く動じていない。
すべてを受け入れてくれるような彼らの包容力を前にして、今までひた隠しにしてきた胸の内を懺悔したくなった。
三成は片手で懐から鈴の入った布製の包みを取り出して渡す。
「この鈴を使い、教えていただいた通りに暗示をかけ、おかげで順調に名無し様は回復しました…。だけど…私は別の暗示もかけてしまったのです」