第5章 五色の夜 安土城編4 【光秀】
《 光秀目線 》
実に間抜けだが、ふにゃりと溶けたような可愛い顔で
「ありがとう‥‥」
と言われ柄にも無く照れた。
華奢な身体だ。
薄い。
柔らかい。
すっぽりと腕に収まり抱いていて非常に心地よい。
最初はガチガチにこわばっていたが、次第に力が抜けて体重が預けられてきた。
寝たか。
起こさぬように片腕で背中を支えてそっと上向かせる。
髪がさらりと垂れた。
すーすーと可愛い寝息をたてたあどけない寝顔に思わず笑いが込み上げる。
さっきまで怖がってたくせに、まったく単純なものだ。
膝の裏をすくいあげそっと抱きかかえて運ぶ。
褥に寝かしつけると、名無しの首もとの赤い痕が目についた。
少しだけ衿元を開かせると、胸へとその痕の数は広がっている。
濃いもの、薄いもの。
すぐに衿元を整えながら、ため息が漏れた。
今夜は、雷と名無しを悩ませるものから守る為に呼び出した。
俺がしばらくいない間に、武将たちから誘いを受けたのだろう。
どうやらそれは、名無しにとって本意では無い様子。
そして深く葛藤している。
以前にこの部屋に来たときの様子、そして今夜最初に部屋に入ってきた時の表情はそれを物語っていた。
少し痩せたか、体も疲弊しているようだ。
そこから解放してやりたいが、それをするのは、俺じゃない、ようだな‥‥
とにかく今夜はゆっくり休め。名無し。
《 光秀目線終了 》