第23章 貴女を意のままに2【三成】
「立てますか?」
再び頷いた名無しの手を取って立ち上がらせる。
「大丈夫…なのか…?」
「はい、お二人ともご心配おかけしてごめんなさい」
すっかり落ち着いた様子。
「それでは参りましょうか」
「失礼します」
一礼して、手を取り合い去っていく二人。
あまりに落ち着き払っていた三成。
名無しはかなり苦しそうだったのに、こんなに早く収まるものなのか。
秀吉と慶次は唖然としながら二人の後ろ姿を見つめた。
翌日、名無しが安土城で書庫の整理をしていると、途中で政宗が現れて手伝ってくれた。
「どうもありがとう。おかげで早く終わった」
「なら空いた時間で休憩しないか?お前の為に作ってきた菓子があるんだ」
「嬉しい、何だろう」
お茶を淹れ、池を臨む縁側に二人並んで座る。
政宗が名無しに渡したのは、硝子の器に乗せられた白くて丸くて、見た目にもふんわりしたお菓子。
「これは…マシュマロ…」
名無しは目を丸くしてじっと見つめる。
「前に言ってただろ、お前の好きな未来の菓子。作ってみたんだ」
「話を聞いただけで?凄い!食べてもいい?」
「ああ」
口に入れた名無しは驚いた表情を浮かべてから、一気にとろけるような笑顔になった。
「おいしーい!!まさか戦国時代でマシュマロを食べれるなんて…嬉しい!!」
「再現できてるか?」
「うん!本当に凄いね!政宗は料理の神様みたい」
幸せそうに食べる名無しを満足気に見つめる政宗。
三成は書庫へ向かっていた。
そこで整理をしている筈の名無しを手伝う為に、抱えていた案件を早く終わらせてきた。
途中の縁側で並んで座る名無しと政宗の姿を見つけ、思わずサッと身を隠す。
お茶を飲み、白い何かを食べている様子。
二人の会話を聞こうと集中する。
「なあ、名無し。俺のところに住まうのはどうだ?」
「え…?」
「もっとお前と一緒にいたい。もっとたくさん話してお前の事を知りたいし、俺の事も知ってほしい」
「……」
名無しは息をのんで政宗を見つめた。
どういうつもりなのか、本気なのか、冗談なのか、その心を図りかねていた。
少し沈黙が降りる。