第23章 貴女を意のままに2【三成】
無理して疲れないか心配で、少し歩いたら部屋に戻ろうと思っていたけれど、思いの外名無しはイキイキとして楽しそうで、そのまま歩き続ける。
こうして手を繋いで歩いているとまるで恋仲になったようで、三成はとても幸せだった。
「名無しーっ!!」
呼ぶ声に二人が振り向くと、政宗が駆け寄ってきた。
名無しの為に自らお粥を作り毎日ずっと届けさせていたが、回復してきたと聞いて直接出向いたのだった。
「政宗!」
名無しは笑顔を浮かべる。
「部屋を出られるようになったんだな。良かった、本当に心配したぞ」
「おかげさまで。いつもお粥作ってくれてどうもありがとう。今日もすごく美味しかった」
「食べれるようになってきたなら、次はもっと元気が出るものを作ってやるからな」
「うん、楽しみ……あっ!!」
その時突然、名無しの身体がふわりと宙に浮く。
政宗にぐいっと引き寄せられ横抱きされていた。
その瞬間、三成と繋いでいた名無しの手が離れる。
「おー、やっぱり前より軽くなってるな」
「……」
名無しは戸惑った様子で頰を赤らめている。
政宗は名無しを腕に抱いたまま、その場で数回飛び跳ねた。
「きゃ…」
その振動の大きさに、思わず名無しは政宗の首にしがみつく。
豪快に笑ってから、政宗はそっと名無しを地面に下ろし、三成の方へ向き直った。
「三成、ありがとうな。名無しの看病してくれて」
「…いえ…そんな…。私は何も…」
「これからは俺が、もっと元気にしてやるからな」
名無しの髪を撫でてから、政宗は踵を返して去っていった。
三成はその後ろ姿を複雑な思いで見つめる。
名無しが他の男に触れられるのが嫌だった。
別に恋仲では無い。
名無しは自分のものでは無いのに…
それなのに筋違いな独占欲を抱いている。
そう思うと全てが虚しくなる。
(政宗様も、名無し様の事を好いているのか)
恋愛事には疎い三成は、政宗がお粥を作って届けていたのは、料理上手な彼の親切心によるものだと思いこんでいた。
でも、思い返すと以前から名無しを気にかけていた様子だった気がする。