第22章 貴女を意のままに1【三成】
床に臥せってからは、三成以外の人とは全く会いたがらなかった名無し。
見知らぬ術師に会うのを嫌がるだろうと思いきや、意外と今回の施術には前向きで、今日は久しぶりに体を起こして小袖に着替え、きちんと帯を締めていた。
そんな行動だけでも三成にとっては嬉しい。
どうか良い結果になって欲しい、祈るような気持ちで術師たちを名無しのいる部屋に案内した。
「名無し様、初めてお目にかかります」
術師たちは丁寧に挨拶をした。
名無しは緊張した様子ながらも笑顔を浮かべる。
「名無し様の事は、佐助殿から聞いております」
(佐助殿…たしか名無し様と同じく未来からきた忍者。そうか、繋がりがあったのか)
三成は佐助と面識は無いが、名無しの話に出てきたのを良く覚えていた。
「佐助くんとお知り合いなのですね。彼は元気ですか?」
名無しの声が弾む。
「はい、元気に活躍しておられますよ。熱心にまきびしの研究をされてましたね」
「ええ、私も貰いました」
しばらく佐助の話が続く。
風変わりな忍者・佐助のこぼれ話を術師がいくつか話すと、
「佐助くんらしいな」
クスクスと笑った名無し。
そんな様子も久しぶりで、三成はまた嬉しくなり自然と顔が綻んだ。
話が一段落すると、名無しの緊張は解けた様子で、その場には和やかな雰囲気が漂っていた。
「そろそろ施術を始めましょうか」
女性術師は穏やかな声で言った。
「恐れ入りますが、石田様は別室でお待ちいただけますか」
「え…」
一人にしていいのだろうか?
三成は名無しに小声で、
「大丈夫ですか?」
と聞くと
「大丈夫です」
と名無しは頷いた。
「あの方達の雰囲気…どこか三成くんと似ているし…」
「そうですか…?」
「それに三成くんが選んでくれた治療だから…私、元気になりたい」
三成をじっと見つめて言った名無しからの前向きな言葉。
それが聞けただけでも術師を呼んだ甲斐があった、そう感じた。
「名無し様、どうか無理はなさらぬよう。何かあればすぐ呼んでくださいね」
「はい」
「よろしくお願いします」
術師に声をかけてから、三成は別の部屋で待機した。