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イケメン戦国 書き散らかした妄想

第19章 託された花2 【家康】


(さすがに限界か…)

「名無し、降りるよ」

家康は馬から降り、すぐに名無しを両腕に抱えて地面に降ろした。

落雷した地点は草が黒く焼けていて、雨の中でも焦げた臭いが鼻に届く。

「……何これ……」

辺りには既に、もやが立ち込めていた。

(これがわーむほーる…)

強い風に煽られて立っていられなくなり、二人は膝をついて地面に座り込む。

(…吹き飛ばされそう…いや…吸い込まれそうな…)

家康はできるだけ低い体勢をとって耐えながら、名無しの両手をぎゅっと握り締めた。

「いやっ…!!」

名無しも同じように全力で耐える。 

しっかりと繋ぎ合わせた手がぷるぷると震えていた。

「名無しっ…!!」

風が一層強くなる。

まるで意思を持って二人を翻弄するように。

とうとう名無しの下半身が地面から浮いた。

「いやああぁぁっ!!」

高い悲鳴が上がった。

家康と繋ぎ合わせた手が離れれば、彼女はあっという間に呑み込まれてしまう…。

互いに限界が近いけれど、

(この手を絶対離さない…)

強く思いながら、引きちぎれそうな痛みの中で力を込める家康。

やがて蹄の音、地面に降り立つ音が耳に届き、そして何者かの強い気配を感じた。

(この気配は…)

二本の逞しい腕が伸びて名無しの両腕をグイッと掴む。

「謙信様!!」

「名無し!待たせたな!!」

凛とした声を響かせた次の瞬間、謙信は渾身の力を込めて名無しの身体を引き寄せ、その腕にすっぽりと納めた。

謙信を取り巻く気配の圧倒的な強さ。

それにまるで怯んだかのように、風の強さが少しだけ緩む。  

その隙に家康は周りを見回し、

「あの大岩の裏へ!」

ワームホールとの間の盾になりそうな大岩を見つけて二人を導いた。

身を隠した瞬間に再び襲いかかる強風。

謙信と家康は名無しを囲んで守り続けた。
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