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イケメン戦国 書き散らかした妄想

第19章 託された花2 【家康】



幸村はずっと、謙信の相手をし続けていた。

(これ…いつまで続くんだ?…)

佐助が謙信から名無しを取り上げ、どこかに託しに行ってから、どれくらい時間が経ったのだろう。

右に左に、正確に斬りかかられ、太刀と太刀が触れ合う烈しい音が響き渡った。

冴え渡る太刀先が、いつどこから振り下ろされるか。

まるで魔物のような、ひんやりとした襲撃の予想をビリビリと全身に感じ、幸村は一瞬たりとも気が抜けなかった。

駆け回って、互いに相手をめがけて飛びかかって斬り結び、また離れる。

それを繰り返す。

初めこそ本気の斬り合い、生命の奪い合いさながらだったが、時間が経つにつれ次第に殺気は薄れていった。

(これ…もう鍛錬だろ…)

幸村はそう感じていた。

そして日が完全に落ちると謙信は唐突に、

『今日は止めだ』

と言い部屋にさっさと戻ってしまい、取り残された幸村は唖然として開いた口が塞がらなかった。

そのままその夜は何も起こらず、翌朝になると

『幸村、続きだ』

と斬りかかってきて再開した。

幸村はわかっていた。

謙信の思考はとっくに冷静さを取り戻してる。

だけど、引っ込みがつかないし、じっとしていられないのだろう。

戦狂いの謙信、こんな時に戦でもあれば良い憂さ晴らしになっただろうけど、織田との同盟で戦が減り、やり場が無い状態。

政務は信玄と義元が問題無くこなしているようだから、

(まあ、いい鍛錬だ。心ゆくまで相手してやるよ)

そう、幸村は腹をくくった。

これは滅多に出来ない超絶に高度な鍛錬。

気分が高揚し、愉しさを感じないと言ったら嘘になる。






太陽が真南に、最も高く登った頃、

依然として斬り結ぶ二人だったが、幸村が何かの拍子で掘られた地面の僅かな凹みに足を取られ、ふと体勢を崩した。

振り降ろされる太刀先を、別の太刀が跳ね飛ばす。

それは佐助だった。

「佐助!戻ったか!」

「幸村、遅くなって申し訳ない。名無しさんを預けてから観測に手間取ってた」

「観測?」

「佐助!俺の名無しはどこだ?」

「謙信様、大変です。ワームホールが発生します」

相変わらずの無表情の佐助だったが、僅かに早口になっていた。
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