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イケメン戦国 書き散らかした妄想

第19章 託された花2 【家康】


その夜は何かがあっても守れるよう、名無しの了承を得た上で家康は隣の部屋に布団を敷いた。

彼女が来てからろくに寝ていない。

それなのに一睡もできずにいた。

たった一瞬見ただけの名無しの肌、美しい手が頭から離れない。

襖ごしに接したって駄目。

焦がれてしまうのは回避不能だ。

「あーもう…何なの……」

思わず口に出してから身体を起こした。

名無しは眠れているだろうか?

壁にそっと耳をつけてみても正確な様子まではわからない。

もし眠れなかったら、まだ泣いてたら、
何かしてあげないと…。

そう思って廊下に出て襖の外から様子を伺うと、かすかに寝息が聞こえた。

彼女は休めているようだし、泣いてもいないから目的は済んだのに、家康はその場を離れられずにいた。

様子は勿論心配だったけどそれだけじゃない。

襖を開けて彼女の姿を見たい…

そんな欲望と理性がしばらく葛藤していた。

(寝顔を見るだけ…)

気配を抑えて襖をそっと開ける。

足音を立てないように部屋に入って布団の脇にそっと座った。

名無しは良く眠っていた。

熱にうなされていた時と違い、今の寝顔は穏やかであどけない。

(可愛い…)

いくら見たって見飽きない。

あの時、襖から伸びた美しい手は…

掛け布団をそっと捲り、両手で彼女の左手を取った。

(ああ…)

触れた途端、ゾクッと全身の血がざわめき、身体の奥に火が灯った気がした。

それ程までになめらかな触り心地。

小さくて、家康の両手ですっぽりと包める。

力の抜け切った適度な重みすら心地よい。

そっと撫でてからゆっくりとその手を持ち上げると、まるで蝶が花に止まるように、自然と吸い寄せられ口づけていた。

唇は指先や掌よりもずっと鋭敏で、彼女の肌の感触や温度、清らかさをさらに強く感じ取れる。

そのまま唇を離さずに、そっと肌の上に滑らせたり、柔く押し当てたり…

彼女を起こさぬよう、静かに手の甲から指先まで愛で続けた。
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