第15章 君の誕生日1 【佐助】
私は布団の上に上半身を起こして足を伸ばして座った。
長座の体勢。
いつの間に用意したのか足台が置いてある。
それは木製の小さな台。
そこにふわふわの座布団、というよりクッションのようなものが乗ってる。
そして、いつの間にかお香が焚かれていて、甘くて少しスパイシーな良い香りが漂っていた。
適度な数に調整された蝋燭が放つ、ユラユラ揺れる柔らかいオレンジ色の光。
くつろげる空間演出。
佐助くんは低めの椅子に座って、
「では、失礼します」
と、絹の掛け布を私の腰から太ももへとかけてくれた。
それからそっと、夜着の裾をめくる。
うわ。足を見られるの、やっぱり恥ずかしい。
緊張するし、何だかドキドキする。
「…!」
一瞬、佐助くんの眼鏡の奥の目が見開かれた気がした。
もしかして足、太いからびっくりした?
ああ…恥ずかしい。
現代でレーザー脱毛しといたのは良かったな。
あー、でもやっぱりどうしよう…落ち着かない。
「あ、BGMが必要か。ヤバい、すっかり失念してた。じゃ、俺が歌う。♪ルールールルー……」
佐助くんは私の左足を持ち上げて足台に乗せながら、何だかよくわからない歌を真顔のまま歌い始めた。
その様子がおかしくておかしくて。
「やめて…笑っちゃって無理!」
「了解」
佐助くんの謎の歌はピタッと止まる。
でも笑ったら緊張がだいぶほぐれた。
ピチャ……
多めに塗られたクリームの冷たい感触に少しビクッとする。
「ごめん、冷たかった?」
「大丈夫」
佐助くんは大きな手で、私の膝下から足にかけてクリームを伸ばしていく。
あ、気持ちいい。
午前中の庭掃除、午後のお針子仕事、夜の宴でのお酒。
むくんだ足の膝から足首にかけて、適度な圧をかけながら大きな手が滑っていくと、疲れが取れて一緒に流されていくよう。
フットマッサージのサロンに行ったことはあるけど、男の人のこんな大きな手でされたことは無く、初めての心地良さだった。
少し手のひらが硬いのも、ちょうどいい刺激感。
「佐助くん、気持ちいい。すごく疲れが取れるよ」
「良かった、そう言ってもらえると嬉しい」
右足も同じようにマッサージしてもらう。