第15章 君の誕生日1 【佐助】
「良かった。上々のようだ」
佐助くんは笑顔を浮かべた。
といっても、ほんの少し口角が上がっただけだから、きっと慣れてない人にはわからない。
私は1ヶ月一緒にいて、ようやくわかるようになった。
「ただ、保存料が入っていない。緑茶の殺菌作用だけだから、早めに使い切ってほしい」
「わかりました。贅沢だけどたっぷり使わせてもらうね」
「今、使わせてくれないかな」
「ん?」
使わせて…?
私は少し考えた。
「…ああ、佐助くんも自分で使って、二人でこの容器の分を早く使い切るってことだね。もちろんどうぞ」
「いや、俺に塗らせてください」
「え?」
佐助くんはいつもの真顔だった。
「名無しさん、さっき足が乾燥してるって言ってたから良かったら塗らせてほしい」
「……」
………え?
ほんとに…?
それって、すごく、恥ずかしい。
「俺が至らなかったせいで君の誕生日なのに試作品を渡すことになってしまい、これじゃプレゼントっていうより、モニターアンケートだ」
「至らないだなんて」
モニターアンケートは、確かにそんな感じだけど。
「その代わりと言っては何だけど、これを使った足のマッサージをプレゼントさせてくれないかな。結構得意なんだ」
そんなの気にすることないのに。
だけど佐助くんの眼差しは真剣。
そこが彼らしいのかな。
私はお言葉に甘えることにした。
「……うん…じゃあ、お願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。このクリームを使ってマッサージした場合の使い心地やリラックス効果も検証したい」
やっぱり研究員みたい、佐助くん。