第15章 君の誕生日1 【佐助】
「ありがとう!わーい、何だろう」
「これはオリジナルの保湿クリーム。椰子油、つまりココナッツオイルをベースに、柘榴や、月見草、向日葵の種などから抽出した保湿成分と、抗酸化作用のある緑茶を配合してみたんだ」
「えっ!これを佐助くんが作ったの?」
「ああ、オーガニックな天然成分のみで作られてるから敏感肌でも安心。全身使えて舐めても大丈夫」
「すごすぎる…」
「上手くできてるか心配だけど」
「ありがとう。すごく嬉しい!冬になって肌が乾燥するのがずっと気になってて、保湿できるものが欲しかったの。手が荒れちゃってね。あと、足も」
「足…」
佐助くんが微妙に何か反応した気がしたけど、特に気にせず私は壺を開ける。
「できれば今、使った感想を教えて欲しい。実はこのクリーム、試作品なんだ。作成が予想以上に難しくて君の誕生日に間に合わなくて…。ごめん、改良を加えた完成品をあらためてプレゼントするよ」
佐助くんは本当に真面目だな。
「うん、ありがとう。じゃあ香りから」
私は容器を鼻に近づけて香りを嗅いだ。
「…ココナッツの香りに少し甘酸っぱい柘榴の香りがして…私、好き」
「やった」
佐助くんは片手の拳をグッと握った。
次に指でクリームを掬ってみる。
さっきまでは容器の色に紛れて気づかなかったけど、妙な色……。
濁った灰色、ちょっと緑っぽくもあり赤茶色っぽくもある。
「……色は……」
「名無しさん、思ったこと遠慮なく言って」
「雑巾を絞った後のバケツの水の色みたい」
「なるほど、女子のテンションダダ下がりの色だな。改良の余地あり。肌に伸ばすと透明になるので今回は許して」
「ごめんなさい、せっかく作ってくれたのにそんなこと言って」
「いいんだ。ユーザーの正直な意見こそ宝。良い製品作りに欠かせない。次、テクスチャーは?」
あなた忍者、だよね?
元々は宇宙物理学専攻の大学院生、だよね?
化粧品会社の開発担当研究員みたいになってる。
クリームは固めだったけど手の甲に置いて伸ばすと肌の温度であっという間に溶けて、意外と伸びがいい。
「スルスル伸びて塗りやすい。ベタつかないでしっとり潤ってる。すごくいいよ!」