第12章 *File.12*(R18)
「おめでとーだな、ゼロ」
「長かったねえ」
「ホントにな」
「……松田、萩」
「班長……」
「やっと会えたな、ゼロ」
「でもゼロは、俺達に会いたくなかったんじゃなかったっけ?」
変わらずプカプカと煙草を吸う松田の隣で、萩がニヤリと笑う。
最期に会った、あの時の姿のまま。
「雪乃を待たせ過ぎたことは、きっちりと反省してもらわねえとな」
「この生涯を懸けて、雪乃を幸せにする」
「約束しろ」
「ああ。この約束は必ず守るよ」
「あらまあ。逞しくイイ男になった」
「ゼロは出会った時からイイ男だろうが。だから、あの雪乃が惚れたんだろ?」
「我が妹ながら、選んだ男の趣味の良さには天晴れだよ」
「……」
一応、褒められてるのか?
四人の視線が痛い。
「やっと五人揃ったな」
みんなの顔を見回した景光が、嬉しそうに笑った。
「ってか、全然驚かねえし」
「景光と雪乃から話は聞いてたからな」
「つまんねえの」
「六人目はまだかー?」
「おっ!ゼロから逃げたくせに戻って来たぞ」
「班長、俺を悪者にするのは止めてくれ」
「えっ?違うのか?」
「ハア」
太い眉を跳ね上げたワザとらしいセリフにため息を一つ洩らした時、雪乃が戻って来た。
「誰か、いるの?」
「おー、いるぜ」
「陣平?!」
遠目からは何も見えなくても、直ぐ近い場所まで来たところで、松田達の姿も声もハッキリと見えて聞こえたらしい。
「また、泣くのか?」
珍しくギョッとした表情で、雪乃を見下ろす。
「泣き虫だからなー、雪乃は」
「また会えたな」
「……萩、班長」
「あーあ。やっぱり泣いちまったか」
「やれやれ」
お前はついこないだ、コイツらに会ったばかりだろう?
「悪ぃな。此処では抱き締めてやれねえんだ」
伊達家の墓前。
平日の早朝だからか、人気はない。
煙草を加えたまま、松田の右手はそっと雪乃の髪に触れる。
普段はサングラスの奥の涼し気な瞳が哀しげに揺れてるように見えたから、松田への嫉妬心がまた燻り始めた。