第12章 *File.12*(R18)
「朝早くから付き合わせて悪いな、景光」
「ゼロと雪乃の選択は正しい。きっと、みんな喜んでるよ」
「だと、嬉しい」
松田の、萩の、そして班長のお墓参りと入籍の報告を済ませた。
「14年越しに、やっとお前との約束が果たせる」
「ああ」
「……14、年?」
俺と景光の視線が雪乃へと向いた。
「高校一年とは言え、生半可な気持ちの奴に雪乃は渡せなかったからな」
「将来までの責任を持つ覚悟がないのなら、付き合うことは疎か、告白さえさせないって言われたよ」
「へっ?」
ギョッとして、景光を見上げた。
景光は双子の兄として、何時もどんな時も誰よりも、雪乃を直ぐ傍で見守って来た。
だから、高一ながらも景光の言い分は最もだと、妙に納得してしまったよ。
雪乃が思っている以上に、兄として、景光はキミを愛している。
それは俺が妬けるほどに。
俺達が出逢った、あの頃からずっと、今でも。
「だってほら、あの時点で既に雪乃はゼロに惚れてたから、ゼロに告られたら、返事はYESしかなかったし?」
「はい?」
「一生懸命隠してたつもりだろうけど、出逢って間も無い頃から、雪乃の気持ちは分かり易くてバレバレだったし?」
「えっ?」
「なあ、ゼロ?」
「……まあ」
「いやーっ!」
遠い目をした俺の反応を見た雪乃は視線が合うなりそう叫ぶと、顔を真っ赤にして駐車場の方へと向かって走って逃げた。
お互い初恋同士なのを知ってるハズ、なんだが?
景光に初めて会った時は一人だったから、
『ボクの双子の妹!』
と、後日、仲良く手を繋いで雪乃を連れて来た時は、とてもじゃないが、妹だとは信じられなかったな。
「物凄く、今更だけど」
「逃げ足早」
中々の脚力。
ダテに刑事やってないな。
「ってか、墓場で叫ぶのはどうかと思う」
「その原因が何が言ってる」
心底呆れた声が出たよ。
「くくくっ」
「可愛すぎだろ」
「あれで30だもんな」
「「!!」」
忘れるはずがない、でも聞こえるはずもない声が背後でハッキリと聞こえた気がして、景光と同時に振り返った。