第12章 *File.12*(R18)
「あら?」
「僕達より先に、誰かお参りに来たみたいですね」
松田君の命日の今日。
朝の八時前なのに、既にそこには短くなって消えかかっている線香の煙が三本に、仏花は真新しくなっていた。
「こんなに朝早くから?」
「松田君が吸ってた煙草まで供えてあるわね」
「松田さんとかなり親しかった人、でしょうか?」
水濡れ防止に、丁寧にジ○ロックに入れられてある。
「フルヤレイさん、かしら?」
「毎年三時頃に参りに来るって、去年、和尚さんが言ってませんでしたっけ?それに線香は三人分ありますよ?」
「去年は二人だったのに、どうして今年が三人分なのかは分からないけど、無性にそんな予感がするのよ」
「直感ですか?」
「女のね?」
線香を供え、高木君の隣で手を合わせる。
ねえ、松田君。
貴方なら、この謎が解けるのにね?
なんてね、冗談よ。
また、来年も来るわね。
瞼の奥で彼の姿を思い描きながら、心の中でそっと呟いた時、
『その謎はスグに解けるぜ』
「えっ?」
変わらないアイツの生意気な声と共に、ふわりと風が舞った。
「高木君、今何か言った?」
「いえ、何も」
ホントに松田君、貴方なの?
だったら…。
ウソを付いたら、許さないわよ!
墓石をしっかりと見つめて、一言そう返事をしておいた。