第12章 *File.12*(R18)
「俺は雪乃に嫌われなければ、それでいい」
「…そんなこと、一生あるわけない」
「有難う、俺もだ」
「うん」
雪乃が小さく頷くのを見てから、深呼吸を一つ。
「私、降谷零は望月雪乃を生涯愛し、この生涯を懸けて、望月雪乃を護ることを誓います」
「……零?」
大きな瞳を見開いて、俺と指輪を見比べる。
「結婚式まで待てない」
こちらの予定は、来年の春になってからだ。
「うん」
目を細めふわりと嬉しそうに微笑む雪乃の左手を取り、手の甲にキスを一つ。
そして、その白く細い薬指に結婚指輪をはめた。
休みを合わせて、少し遠い店まで二人で選びに行って購入した、結婚指輪。
オーダーした後日に受け取りに行き、指輪を受け取ったその日以降はずっと引き出しの中に大切に保管されていた。
「私、望月雪乃は降谷零を生涯愛し、この生涯を懸けて降谷零、貴方を護ることを誓います」
緊張のせいか、少し震える指先が俺の左手に触れて、結婚指輪をはめてくれた。
「ふぅ。心臓バクバクしてる」
子供っぽい可愛い仕草は、
「昔から変わらないな」
自分の胸に手を当てて、深呼吸をしている。
「うん?」
「何でもない」
お互いに、リングをはめた手同士を絡め合う。
絡め合った指先の温もりと、薬指にはめられた慣れない指輪の重さが恥ずかしくもあり、心地良くて。
でもそれ以上に酷く切なくもあり、言葉にならないほどの歓びに感極まって。
色んな感情を引っ括めた上にあるのは、ただ身も心も全てを満たされた、幸せ、の二文字。
「やっと……」
「ん?」
「零は私のものって自信が持てる、かな?」
「かな?」
「私の夫は超イケメンで何でも出来て、何時でも何処でもケタ外れにおモテになるので」
「俺の可愛い妻は警視庁で唯一お嬢と呼ばれる、捜一のマドンナだけどな」
「「ふっ」」
額を合わせて、同時に微笑み合う。
「「不束者ですが、これからも宜しくお願いいたします」」
真っ直ぐに見つめ合って、誓いの口付けを交わした。
何時の日にか、死が二人を別つとも。
互いを想う、光輝くこの温かな気持ちだけは永久に何一つとして変わることがない、俺達だけのもの。