第11章 *File.11*
「うん。忙しいのに、助けに来てくれて有難う」
ゆっくりと背中を抱き締め返してから、深呼吸。
「いくら刑事とは言え、三人もの男を相手に無茶をしでかす前に、助けられて良かった」
「…信用してない」
「退院したところだし?」
「ムッ」
「冗談だ」
頭上でふっと一つ笑って、腕を離した。
「怪我、は?」
「あるわけがないだろう?」
あんな素人相手に。と、心の声が聞こえた。
「よかった」
「ああ」
そこでスマホを出して、録音音声を停止させた。
零はコクリと一つ頷いてから、警視庁に連絡を入れる。
婦女暴行未遂の男達を引き取りに来るように、と。
証拠はスマホの録音音声と、防犯カメラ。
被害者は、私…じゃん!
面倒臭ッ!
「安室透、か」
「でしょうネ。とは言え、今更どうしようもないでしょ?」
期間限定ではあるけど、確かに安室透と言う人間はまだ此処に存在している。のだから。
「すまない」
「謝らないでいいの!私は零からの愛があれば、怖いモノは何もないの。だっ!」
から、平気。は、突然塞がれた唇によって消されてしまった。
「ったく」
「それは私のセリフです」
「…急に可愛いことを言う、雪乃が悪い」
零の車で警視庁へ向かいながら、チラリと視線を向けられる。
あんな場所でキスされた挙句、腰の力が抜ける寸前まで離してもらえなかったし!
最近、ホントに遠慮がないって言うか、人目を憚らないって言うか。
公安のゼロが、それで大丈夫なの?
「そんな覚えはありません。私はホントのことしか言わないよ」
そう返事をすると、窓の方へフイと顔を背けた。