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*名探偵コナン* Daylight *降谷 零*

第10章 *File.10*(R18)


「ポアロは、来月いっぱいで辞めることにしたよ」
「…辞める?」
「何か問題でも?」
「ありません。が、どうして急に?」
「急に、ってわけでもない。組織の件が片付いた時から、考えてはいた。以前のように毛利さんの傍にいる必要もなくなったし、工藤君とは何時でも連絡は取れる」
「確かにね。けど、ポアロのお客さん、急に減らないかな?」
「…心配はそこか」
「JKが殺到して、辞めるまで大変だよ。安室さんはちょー人気者だから、最後に一緒に写真を撮って下さい!とか、握手して下さい!ってね」
「既に他人事なのか。そもそも、辞めることを事前に知らせるつもりはない」

一人ワクワクして、一体どんな妄想だ。
当たり前だが、どちらも即却下だ。

「仮にも公安の捜査官がひと騒動起こさない為にも、それが一番いいっか。でも、一つだけ利点があるかな?」
「……利点?」

仮にも、とはなんだ。
仕事のことか?
箸を止めて、首を傾げた。

「だって、零を独り占め出来る時間が少しでも増えるでしょ?」
「!」

ニコニコしながら、何でこうも可愛いこと言うかな?

「零?」
「食事中に言うんじゃなかったな」
「どうして?」
「今すぐ雪乃を抱けない」
「へっ?いやいやいや、ご遠慮願います」
「何故?」
「だって、全然寝かしてくれないもん」
「仕方ないだろ。一度抱いたら何時までも啼かせたくなって、結果、俺も眠れない」
「自業自得ですっ!もうこの話は終わり!」
「今すぐ抱かれなくなったか?」
「違いますっ!」
「くくくっ」

本音交じりに揶揄うと、目の前で真っ赤な顔をして夕食を食べる雪乃が可愛くて仕方ない。

「ホントに辞めて、よかったの?」
「ああ。ポアロがピンチの時は駆け付けるし、頼まれれば新しいメニューも考えるつもりだ」
「零らしい」
「何処が?」

クスッと笑みを洩らす。

「責任感が強いっていうのか、情が厚いっていうのか、どっちもなのかな?零のイイトコの一つ」
「そう、なのか?」
「うん」

ふわりと笑う。
幼さが消えた、柔らかくて優しい表情で。
不意に見せる、お前のその表情には昔から弱い。
一瞬で、全ての思考を奪われる。

「ご馳走様でした」

そんな俺の気持ちも露知らず、雪乃は手を合わせてから二人分の食器を流しへと運ぶ。


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