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*名探偵コナン* Daylight *降谷 零*

第9章 *File.9*


「美和子は高木にもらったもんね、指輪。三池は?」

高木のサプライズは見事に裏目に出た上に、事件に巻き込まれて大変だったみたいだけど、ね?

「まあね」
「私はまだまだですよ!」
「三池も幼馴染?」
「一応は」
「こっちはおっとりのほほんカップルよね」
「雪乃さんは違うの?」
「おっとりものほほんも、ほど遠いかも」

たまーにあるかな?レベルじゃない?
お造りのマグロを口に入れながら、自宅での二人を思い出す。

「非番の日は?」
「休みが合えば、ドライブとか極普通のデート?私がしたいこと、行きたいトコ優先かな?」
「一人の時は?」
「そりゃもう家でゴロゴロよ」
「「「でしょうね」」」
「えーっ!私だけ?」
「だって雪乃さんって、ヘタしたら一日家に居そう」
「あー、そんな日もあるある」

で、帰って来たゼロに呆れられる。
更にそれをいいことに、抱き潰される。

「なんか急に生気がなくなったけど、大丈夫?」
「…嫌なこと思い出した」

なんて本人には絶対に言えないけど!
逆に言えば、これ以上にない幸せな時間。でもあるもんね。

「このだし巻き美味し」
「私も食べる」
「お造りは私食べちゃいますよ」
「どうぞー。美和子、結婚は?」
「まあ、そのうち?」
「イカだけちょーだい」
「はい、どうぞ」
「ありがと」

差し出された大皿から、イカだけをいただく。

「美和子より、高木君が早く結婚したそうよね」
「ライバル多いからね、高木は」
「まだ、松田さんのこと?」
「もう大丈夫よ」
「全然そうは見えないけどー?」

気丈に返事をする美和子を見て、由美がヤレヤレとため息を洩らす。
まだ思い出には出来ない、よね。
私も、だから。

「……」

松田陣平。
その名前を聞いた瞬間、ドキリと心臓が跳ねた。
軽く瞼を伏せるだけで、彼の明るい声や夢の中で抱き締められた腕の温もりを思い出す。
美和子は私と彼が同期だと、陣平とゼロと景光、萩と班長の五人が同期でやんちゃをしていたと知ってはいても、彼らと私が親しい関係だとはまだ知らない。

「ちょいとお手洗いに行って来る」
「「「いってら~」」」

ヒラヒラと手を振り、一人廊下に出ると数歩歩いてから立ち止まって、明るいとは言えない狭い通路の壁に背中を預けた。


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